ノンフィクションライター。サンケイスポーツでサッカー、オリンピックを中心に取材、執筆。米国駐在時はMLBまで網羅するなど、スポーツ分野の守備範囲は幅広い。第一線で取材、執筆を続けるため独立。近年はスポーツのみならず社会問題にまで取材範囲を拡げる。
大会最多の6度目の戴冠か。あるいは、史上4チーム目の大会連覇か。鹿島アントラーズとガンバ大阪が対峙するナビスコカップ決勝は10月31日午後1時5分、埼玉スタジアムでキックオフを迎える。
視界にはジャンプしながら両手を伸ばし、捕球体勢に入ったヴァンフォーレ甲府のGK河田晃兵の姿がはっきりととらえられていた。
今シーズンの始動を間近に控えた1月のある日。湘南ベルマーレのMF古林将太のスマートフォンが、おもむろに鳴った。電話をかけてきたのは曹貴裁監督だった。
所属チームやライバルの垣根を越えて、ベンチで戦況を見つめていたサンフレッチェ広島のFW佐藤寿人は拍手を送っていた。目の前では、川崎フロンターレのFW大久保嘉人が咆哮をとどろかせている。
日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督は後悔していた。ちょっとしたタイミングのズレで、急成長中のボランチをリストに加えれなかったことを――。
「90分間あたりの得点率」という記録がある。ゴール数と出場時間から、その選手が1試合平均で何点をあげているのかを算出するものだが、今シーズンのJ1ではちょっとした"異変"が起こっている。
残りが10試合となり、いよいよ最終コーナーに突入したJ2戦線。各チームが32試合を消化しているなかで、3位につけているセレッソ大阪のキャプテンにして精神的支柱、ボランチの山口蛍はここまで5試合を欠場している。
痛み止めの注射を打って試合に強行出場する選手はいても、チームの練習に歯を食いしばって臨む選手はまずいない。常識的に考えてもありえないと思っていたからこそ、一報を聞いたときには耳を疑った。
新天地へ旅立つときのあいさつは、えてして紋切り型の内容となることが多い。ヨーロッパに戦いの場を移すJリーガーの場合は特に、感謝の思いを伝えたい人たちを順に挙げて締めくくる。
足掛け7年にわたって積み重ね、大台に到達させた通算ゴール数を忘れさせてしまうほど、日本代表のFW本田圭佑(ACミラン)は不完全燃焼の思いを募らせていた。
敵を作らない能力、と表現すればいいだろうか。今夏から挑戦の場をブンデスリーガのマインツへ移した日本代表FW武藤嘉紀が放つ、摩訶不思議なオーラを目の当たりにした思いがした。
日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督が、気にかけているJリーグのクラブがある。湘南ベルマーレだ。
ここ数年のJリーグにおいて、こんな言葉を見聞きする機会が多くなった。
兄弟がそろってサッカーを始める。ともにプロになれるほどのレベルに達する。同じクラブのユニホームに袖を通す。競争を勝ち抜いてベンチに入る。同時にピッチの上に立つ。そして――。
蒸し暑さがまだ漂う夜空に主審のホイッスルが鳴り響いた瞬間、猶本光(浦和レッズレディース)は朱色のヘアバンドを左手でずり下ろし、そのまま首にかけた。
なでしこジャパンのプライドを背負ってピッチに立ち、日の丸の威信をかけて国際試合の真剣勝負に臨み、勝利を目指して必死にプレーした結果として初めてわかることがある。
チームの歴史にその名を残すプレーヤー、いわゆる「レジェンド」のシンボルだった背番号をいまも大切にしているJクラブは少なくない。
午前9時から開始された23日の練習を終えた後に、湘南ベルマーレのDF遠藤航はフロントから呼び出しを受けた。強化部の田村雄三テクニカルディレクターから告げられたのは、東アジアカップに臨むハリルジャパンに選出されたという吉報だった。
実るほど頭を垂れる稲穂かな――。もっとも実をつけている枝が一番低く垂れさがる様から転じて、「偉い人ほど偉ぶらない」を意味することわざを、彼女ほど体現しているアスリートはいないだろう。
手応えと悔しさ、そして決意。155cm、52kgの小さな体に目いっぱいの手土産を詰め込んで、なでしこジャパンのFW岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)は女子ワールドカップが開催されていたカナダから帰国した。
キャプテンとしてチームを統率する力――サッカーやラグビーでよく使われる「キャプテンシー」という言葉の意味を辞書で調べると、こう綴られている。
ボールをもっている味方に対して、半身の体勢をとる。パスを自分の間合いに呼び込み、前方へ流しながら体も回転させて一気に抜け出す。
わずか3秒の間に、FW宇佐美貴史(ガンバ大阪)は思考回路をフル稼働させていた。高速ドリブルで突き進みながら、3つの選択肢からベストのプレーを弾き出そうとしていた。
シュート体勢に入った相手が不意に目の前に現れたら、ゴールキーパーはまずお手上げだろう。まさに絶体絶命のピンチで、湘南ベルマーレの守護神・秋元陽太は驚くほど冷静に状況を見極めていた。
6月から幕を開けるワールドカップ・ロシア大会出場をかけたアジア2次予選へ向けて、日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督が不安を覚えているポジションがある。
対戦したチームの監督をして、このように言わしめるJリーガーはなかなかいない。
不思議な縁を感じずにはいられない。運命に導かれている、と言ってもいいかもしれない。
祝福しようと駆け寄ってきたチームメイトを振り払って、湘南ベルマーレのFW高山薫はピッチの外へ向かってダッシュを開始した。
永遠のサッカー少年と4度目の年男。ピッチに立つたびに伝説を刻み続けるFW三浦知良(横浜FC)のなかには、“ふたりのカズ”が同居している。
誰しもが経験するアスリート人生のターニングポイント。FC東京の日本代表FW武藤嘉紀は22歳にして、実に3度目となる「それ」を迎えている。
昌子源と書いて「しょうじ・げん」と読む。日本サッカー界の「プラチナ世代」と呼ばれる1992年生まれの22歳。鹿島アントラーズに加入して4年目を迎えた昨シーズンは、最終ラインの統率役としてリーグ戦全34試合に先発。日本代表にも抜擢された伸び盛りのホープだ。
いつか見た光景だった。相手のペナルティーエリア付近でこぼれ球を拾ったFW宇佐美貴史(ガンバ大阪)がドリブルの体勢に入った瞬間、後方から見ていたセンターバックの昌子源(鹿島アントラーズ)はデジャブを覚えずにはいられなかった。
ゴールを決めるためにピッチに立つ。フォワードというポジションを任されるサッカー選手の大多数が描く「目的」と「手段」の関係が、日本代表の常連である岡崎慎司(マインツ)の場合は逆になっている。
新体制における初めての練習。どんなメニューが課されるのか。何よりも、どんな監督なのか。さまざまな思いが交錯するなかで、日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督が発した言葉に選手たちは思わず拍子抜けした。
14年目を迎えたプロサッカー人生で、湘南ベルマーレのDF坪井慶介は初めてといっていい感覚を経験している。
湘南ベルマーレを率いて4シーズン目となるチョウ・キジェ監督は、ミーティングを大事にしている。特にキックオフ前に行うミーティングについては、「そこで失敗したときには絶対に勝てない」という信念にのっとり、入念な準備を積み重ねて臨む。
「右だよな。右に蹴るんだろう、右に」
子どもたちに「好きなサッカー選手は誰」と聞くと、決まってポジションが偏ってくる。ゴールを量産するストライカーか、華麗に攻撃を差配するトップ下。まばゆいスポットライトがあてられる選手に憧れる図式は、山形県においても変わらなかった。
前アルジェリア代表監督のバヒド・ハリルホジッチ氏を軸に、ようやく候補が一本化される情勢を見せてきた次期日本代表監督人事。ハビエル・アギーレ前監督が電撃解任されてから3週間あまりの間に、事態は尋常ではない動きを見せてきた。
日本サッカー協会は、組織としての体をなしていないのではないか。日本代表のハビエル・アギーレ前監督を解任した後の対応を見ていると、懐疑的な視線を向けられずにはいられなくなる。