ノンフィクションライター。サンケイスポーツでサッカー、オリンピックを中心に取材、執筆。米国駐在時はMLBまで網羅するなど、スポーツ分野の守備範囲は幅広い。第一線で取材、執筆を続けるため独立。近年はスポーツのみならず社会問題にまで取材範囲を拡げる。
■天皇杯の表彰式で訪れた異例の光景
■小笠原が意図的に演出した乱闘騒ぎ
■湘南ベルマーレでの3年目のシーズンへ
■昨シーズンに移籍オファーを断った理由
■歴代最年長での最優秀選手受賞
■日本中に勇気を与えた同点ゴール
■世界中へ発信されたゴールパフォーマンス
■思いもよらない24歳のバースデープレゼント
ひとりだけ逆方向に動いた。ピンチを察して戻るオークランドシティ(ニュージーランド)の選手たちと、チャンスの匂いを嗅ぎ取って詰める鹿島アントラーズの選手たちが混在するゴール前で、FW赤崎秀平の得点感覚が異彩を放った。
鹿島アントラーズが世紀の下克上を成就させるのか。6万人近いファンやサポーターで埋まった浦和レッズのホーム・埼玉スタジアムが騒然とするなかで、前代未聞の光景が繰り広げられていた。
トレードマークでもある背番号の数だけ、チームメイトたちの手で宙を舞った。その数、実に16回。冷たい雨が落ちてくる夜空を見あげ、サポーターのかけ声を浴びながら、松本山雅FCの鐵戸裕史(てつと ひろし)は万感の思いを胸に募らせていた。
数字がすべてを物語る。新天地・鹿島アントラーズでプレーした2016シーズン。ファーストステージとセカンドステージとで、ボランチの永木亮太はピッチのうえにおける存在感を大きく変化させている。
トップ下として2試合ともに先発し、合計で135分間プレー。PKを獲得した場合にキッカーを務める大役も担い、実際にPKによるゴールをひとつずつ決めて、味方のゴールもふたつアシストした。
心から愛する日本代表チームに対して抱いていた歯がゆさが、心躍らされる思いに変わった。ターニングポイントはホテルの一室でテレビを介して見た、オマーン代表との国際親善試合だったとDF長友佑都(インテル・ミラノ)は屈託なく笑う。
充実感は表情に表れる。オマーン代表との国際親善試合、そしてサウジアラビア代表とのワールドカップ・アジア最終予選第5戦に臨む日本代表に招集された長谷部誠は、11月7日の帰国から16日未明の離日まで、常に精かんさとみなぎる闘志とを漂わせていた。
最後に日の丸を背負ってプレーしてから、実に2年半近くもの空白期間が生じている。J1の舞台でもっとも切れ味鋭い攻撃力を搭載するドリブラーは、その間に26歳と中堅の域に達し、今シーズンはゴール数を初めてふた桁に到達させた。
スポットライトのまばゆさばかりに目を奪われていると、時として「本質」を見過ごしてしまうことがある。Jリーグ最年少デビューを果たした中学3年生、FW久保建英(くぼ たけふさ)をめぐるフィーバーは、その典型的なケースとなるだろう。
左利きでありながら、任されるポジションは中盤の右サイドが多い。アタッキングサードに攻め入るや中央へと切れ込んでいき、ボールをもち替えることなく、勢いに乗ったまま利き足を思い切り振り抜く。
右タッチライン際をドリブルで駆けあがりながら、浦和レッズのMF駒井善成は後半のキックオフ前に、チームメートからささやかれた言葉を思い出していた。
目の前の「試合に出たい」という思いと、これからも「試合に出続けたい」という思い。言葉にすれば似ている感情だが、選手の胸中に生まれるプレッシャーは対極に位置するものといっていい。
出場資格をもっていたオリンピックごとに世代を区切ってみると、ワールドカップ(W杯)ロシア大会出場をかけてアジア最終予選を戦っているハリルジャパンにおいて、ある“変化”を見つけることができる。
背筋をピンと伸ばし、高く保たれた視線はしっかりと未来を見すえている。それでいて、ときおり柔和な笑顔を浮かべ、口を突く言葉を聞いているうちに、気がつけば前向きな思いにさせてくれる。
ある選手がPKキッカーを任される理由は、ほとんどのクラブにおいて同じ傾向があるといっていい。いわく「正確なキックを蹴れる」あるいは「心理的な駆け引きで相手の逆を突ける」と。
3つのJクラブで、700を軽く超える公式戦に出場。日本代表としても歴代最多の152キャップを獲得している36歳の大ベテラン、遠藤保仁をしてこう言わしめるホープが、ガンバ大阪で輝きを増している。
189センチ、78キロの大きな体が激しく揺れる。ゴール正面から左サイドの隅へ。視界のなかにイラクの選手をとらえながら、DF吉田麻也(サウサンプトン)が必死の形相でロングボールを追いかける。
これまでの“図式”が大きく崩れている。所属クラブでの輝きを、なぜ日本代表で放てないのか。ザックジャパン時代からこんな疑問符をつけられてきたMF香川真司が今シーズン、ボルシア・ドルトムントにおける出場機会をも激減させている。
心地よい武者震いと、ちょっとした違和感。異なるふたつの感情をその胸中に同居させながら、川崎フロンターレのゴールキーパー高木駿は利き足の左足からタッチラインをまたがせた。
J1の年間総合順位で3位以内を確定させて、チャンピオンシップへの初出場を決めた川崎フロンターレの大黒柱、35歳のキャプテン中村憲剛から、ことあるごとに「哲学」を叩き込まれているホープがいる。
乗り越えてきた試練が大きい分だけ、発せられる言葉に「重み」がもたらされる。ほんの一瞬にせよ、その脳裏に「引退」の二文字が浮かんだのだから、なおさら彼の一言一句は含蓄に富んでいた。
かつて喜怒哀楽のすべてを刻んだピッチに、苦楽をともにした先輩たちがいる。キックオフ直前には、ウォーミングアップのためにロッカールームから姿を現しただけで拍手と歓声を浴びた。
4人の監督から厚い信頼を寄せられ、2010年代の日本代表を力強くけん引してきた本田圭佑が、サッカー人生で最大といっていいほどの逆風にさらされている。
笑顔はポジティブな力を生み出す。つらいとき、悔しいとき、怒りではらわたが煮えくり返りそうなとき。日本代表のゴールキーパー西川周作(浦和レッズ)は努めて笑うように、自らへ言い聞かせている。
攻撃から守備へ。試合の流れが変わった、いや、変わろうとする刹那になると、必ずといっていいほど日本代表の白いユニフォームが飛び込んできては、タイ代表のチャンスの芽を摘み取っていく。
悲壮感を漂わせているわけでも、ましてや黒星を喫した責任の重さに打ちひしがれているわけでもない。所属する川崎フロンターレの試合後と同じように、大島僚太は端正なマスクにかすかな笑みをたたえながら取材エリアに姿を現した。
頑張り屋と点取り屋。前者はプレミアリーグ王者のレスター・シティに、後者は6大会連続のワールドカップ出場に挑む日本代表に。タイプのまったく異なる、2人の岡崎慎司が存在している。
日本代表を率いるバヒド・ハリルホジッチ監督も、ホッと胸をなでおろしているはずだ。日本代表FW浅野拓磨がブンデスリーガ2部のシュツットガルトへ期限付き移籍――26日夜に伝わってきたニュースは、日本サッカー界が待ち望んだ朗報だった。
どのような思いを抱きながら、日本へ帰ってきたのだろうか。ブンデスリーガの強豪シャルケが運営する日本語版クラブ公式ツイッターが18日、DF内田篤人が治療のために一時帰国するとつぶやいたのを見て、複雑な思いを抱かずにはいられなかった。
レストランや観客席、オフィシャルショップが併設された北海道コンサドーレ札幌の練習拠点「宮の沢白い恋人サッカー場」へ、MF小野伸二はいつも練習がスタートする2時間前には到着している。
ちょっぴり早口で、それでいてポツリと漏らした言葉に、感謝の思いを凝縮させていた。
出場する選手に年齢制限が設けられている点で、男子サッカーはほかの夏季オリンピック競技と明らかに一線を画している。