「負けたので悔しいです。自分の持ち味を出せなかったとも思いますし、このチームに必要とされているのは守備の部分だと思うので、そこで球際で負けて失点につながることもあった。まだまだだと思いました」
■国際Aマッチのデビュー戦
9月1日。埼玉スタジアムを埋めた満員のファンやサポーターの前で、UAE(アラブ首長国連邦)代表に逆転負けを喫したワールドカップ(W杯)アジア最終予選の開幕戦。23歳の大島はボランチとして抜擢され、A代表として初めてピッチに立った。
ただでさえ緊張感で足が震えがちな国際Aマッチのデビュー戦。大島の場合は、記念すべき初陣がワールドカップ出場をかけたアジア最終予選の初戦となった史上初めての選手となった。
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大島僚太 (c) Getty Images
UAE戦で史上6人目となる通算100試合出場を達成した、チーム最年長の32歳にして、不動のキャプテンを務めるボランチの長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)の相棒は果たして誰になるのか。
有力視された柏木陽介(浦和レッズ)が、8月28日から埼玉県内で始まった直前合宿中に左股関節痛で別メニューを強いられる。非公開で行われた戦術練習で長谷部と組む時間が増していくなかで、大島は自分なりの覚悟を固めていった。
「練習で何となく(先発だと)思いました。(責任が)重いことなんだろうとは思いましたけど、そこまで何かをする経験があるわけではないので、僕は僕らしくまっとうすることを心掛けて臨みました。みんながすごくポジティブな声をかけてくれたので、そこまで緊張はしなかったと思います」
大島らしいプレーとは何なのか。試合のなかで一緒にプレーした選手が、ともにリオデジャネイロ五輪を戦ったFW浅野拓磨(シュツットガルト)とMF遠藤航(浦和レッズ)、チームメートのFW小林悠に限られるなかで、大島は必死にイメージを膨らませていった。
「ボールの動かし方というのは代表のスタイルがあると思うので、そこで僕が入って川崎の(動かし方を出す)というよりは、代表スタイルの動かし方というところでクオリティーといったものを、僕ができる限り出していければ。(五輪でも)オーバーエイジの3人がぎりぎりで入ってきたなかでも何とかできたので、そんなに深く考えずにやれればと思います」
トータルで見れば、及第点のプレーを演じたといっていい。UAEの守護神ハリド・エイサの美技に阻まれたものの、後半4分にはペナルティーエリアの外側から強烈なミドルシュートも放っている。
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大島僚太 (c) Getty Images
しかし、失点に絡むプレーをふたつも演じ、結果としてハリルジャパンの黒星に結びついてしまえば――。残念ながらそれらの残像のほうが、見ている側の記憶に色濃く刻まれてしまう。
MF本田圭佑(ACミラン)のヘディング弾で先制してから9分後の前半20分。中央のやや右寄りの位置から、右サイドバックの酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)へ出した横パスはあまりに弱かった。
UAEのツートップの一角、キャプテンのアハメド・ハリルがインターセプトしようと、猛然と酒井との間合いを詰めてくる。ボールを奪われてなるものかと、酒井も半ば強引にボールを中央へ蹴り返す。
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