【THE REAL】FC東京の最古参・石川直宏が乗り越えた試練…復帰戦はゴールではなくスタートライン | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】FC東京の最古参・石川直宏が乗り越えた試練…復帰戦はゴールではなくスタートライン

オピニオン コラム
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乗り越えてきた試練が大きい分だけ、発せられる言葉に「重み」がもたらされる。ほんの一瞬にせよ、その脳裏に「引退」の二文字が浮かんだのだから、なおさら彼の一言一句は含蓄に富んでいた。

「うわっ、久しぶりだな、この感じは」

ホームの味の素スタジアムに、ブラウブリッツ秋田を迎えた19日のJ3第22節。FC東京U‐23のオーバーエイジの一人として、後半21分からピッチに入った35歳のベテラン、MF石川直宏の第一声だ。

石川が公式戦の舞台に立つのは2015年7月29日のベガルタ仙台戦以来、実に419日ぶりとなる。その間に2度に及ぶ左ひざの手術と、自らに課した過酷なリハビリを克服してのカムバックだった。

ファンやサポーターだけでなく、メディアもスピードスターの帰還を心待ちにしてきた。だからこそ、ブラウブリッツ秋田戦後の取材エリアでは、テレビカメラと数十人の輪が石川を取り囲んだ。

再びピッチへ戻って来られたという安ど感。アディショナルタイムを加えた約30分間のプレーが、ゴールではなくスタートだという新たな決意が「うわっ、久しぶりだな、この感じは」に凝縮されていた。

「思ったよりも冷静にピッチへ入れました。試合展開も0‐0でしたし、とにかく勝負を、自分が決めてやるという気持ちと、あとは攻守の切り替えを。ずっと一緒に練習していたこともあって、コンビネーションに関しては特に不安はありませんでした。自分が入ることによってチーム全体にスイッチが入ったと思いますし、体力的にも全員が最後まで足を止めなかった。そういう姿に僕も勇気づけられて、いい形で試合を終えられたかなと思っています」

ベガルタ戦から4日後の2015年8月2日。舞台をドイツへ移して行われた、アイントラハト・フランクフルトとの国際親善試合。後半開始ともに出場した石川の左ひざが悲鳴をあげたのは21分後だった。

ジャンプから着地した際に、体中を駆けめぐった激痛。失意の帰国後に受けた精密検査で、左ひざ前十字じん帯が断裂していると告げられた。患部の腫れが引くのを待って、8月下旬に再腱手術が行われた。

命綱のひざに大けがを負うのは、2000シーズンにスタートさせたプロサッカー人生で3度目になる。最初は2005年9月17日。古巣の横浜F・マリノス戦で、右ひざ前十字じん帯と外側半月板を損傷した。

2度目は、約5年半ぶりに日本代表復帰を果たした直後の2009年10月17日。柏レイソル戦で左ひざ前十字じん帯を損傷し、それまで15ゴールをあげていた絶好調のシーズンを棒に振った。

フランクフルト戦での負傷を含めて、全治はくしくもすべて8ヶ月だった。しかし、20代のころと30代も半ばにさしかかったいまとでは、同じ期間でも特に心に与えるダメージがまったく異なる。

過去に2度も味わってきた、過酷なリハビリがまた待っている。よしんばそれを乗り越えたとしても、ひとつ年齢が加わって35歳になっている。当時の脳裏に浮かんでは消えた迷いを、石川はこう振り返る。

「けがをした直後は、そこからどうしようかというところは正直…そこはいろいろ考えました。ただ、リハビリを始めて、必ずピッチに戻るんだと決めてからは、あきらめたことはありません」

不完全燃焼の思いを抱えたまま、大好きなサッカーに別れを告げたくない。時間の経過とともに、鋼の意志と熱い思いが上回っていったのだろう。予期せぬアクシデントで復帰が延びても、石川の心が折れることはなかった。

FC東京は今シーズンからU‐23チームを編成して、J3に参戦させている。そして、リーグ戦には24歳以上の選手をオーバーエイジとして、3人まで出場させることが可能になる。

石川の復帰はJ3で、まずは5月8日のY.S.C.C.横浜戦が予定されていたが、コンディションが整わずに見送られた。次に定められた7月3日の福島ユナイテッド戦の前日の練習で、再び左ひざに痛みを覚える。

福島戦と翌週の藤枝MYFC戦を回避しても、痛みは消えない。精密検査の結果は左ひざ内側半月板の損傷で全治約2ヶ月。埼玉県内の病院で7月下旬に、再び左ひざにメスを入れた。

次から次へと連なってくる悪夢の連鎖を、それでも石川は「そう簡単には復帰させてくれなかったですね」と笑顔で振り返る。このときもまた、ベテランの言葉に「重み」を感じずにはいられなかった。

「そこ(復帰予定戦)からちょっと時間が経っちゃいましたけど、自分らしい姿で戻るのが一番だと思っていたので。今日はそういう部分を少し見せられた部分があるし、まだまだ物足りない部分もある。コンディションはもっとよくなると思うし、まだ抑えているところもあるけど、ちょっとずつですね。いきなりギアをトップに入れちゃうと、あちこち(痛みが)出てきちゃうので。そこはこれまで十分に学んできたつもりだし、あくまでもここでの活躍がなければ、トップチームでのプレーもないと思っています」

迎えた2016年9月19日。石川がSNS上でベンチ入りを告知していたこともあり、雨が降り続いていたにもかかわらず、味の素スタジアムには今シーズンの平均を大きく上回る3236人がつめかけていた。

もっとも、石川本人は一抹の不安を覚えていた。起床してから移動のバスに乗り込み、スタジアムに到着。試合前や試合中のウォーミングアップを終えるまでに抱いた本音を、苦笑いしながら明かしている。

「昨晩に寝る前もそうですし、本当にいろいろなことを考えていました。正直、いままで試合に出るまで、自分に何が起きるかわからないような状況だったので。十分な積み重ねはしてきましたけれども、けがだけは(もう勘弁してくれ)と、本当にドキドキしていました」

そして、後半18分すぎに、唯一開放されていたメインスタンドから拍手が沸きあがる。アップしていた石川がベンチへ呼ばれ、中村忠監督の指示を受けながら、ビブスを脱いだ瞬間だった。

久しぶりの目の前で見る背番号「18」に、石川のチャントも聞こえてきた。プレーがなかなか途切れず、実際にピッチに入るまでの数分間。背中に浴びる拍手と声援を、石川はエネルギーに変えていた。

「長く待っていてくださった方々に恩返しというか、そういう気持ちでラインの外で待っていました。ピッチに立ったときには『自分のホームなんだな』とあらためて思いましたし、実際に何の不安もなく戻って来られたのかなと。ピッチに入ってからは勝つことだけを考えてプレーできましたし、今日の試合でいえば球際の攻防や攻守の切り替え、最後は勝ちにいくという姿勢を(若い選手たちに)示してもらったし、その意味では僕もみんなに刺激を与えたかった。結果として勝てたことで、そういう影響を与えられたんじゃないかなと思っています」

ポジションは「4‐2‐3‐1」の「3」の左。しばらくすると、同じくオーバーエイジで出場していたMF水沼宏太と話し合い、入れ替わって長く慣れ親しんできた「右」に回った。

ファーストタッチは交代出場から約6分後の後半27分。右タッチライン際の石川にパスが通るだけで、スピードに乗った突破を期待する大歓声がメインスタンドの屋根に反響した。

同42分には右サイドに回り、ボールキープからペナルティーエリアの左側へ絶妙のスルーパスを通す。そのままゴール前へ走り込んだものの、石川へのリターンパスは寸前でカットされてしまった。

しかし、クリアを拾ったDF柳貴博が再びゴール前へクロスを入れる。FW林容平のポストプレーからMF小山拓哉がシュートを放ち、相手GKにセーブされたこぼれ球を水沼が豪快にゴールへ押し込んだ。

待望の先制点をあげると、ユース所属の2種登録選手を含めたチーム全体が、復帰した石川にボールを集める。GKの正面を突いたものの、アディショナルタイムには石川が強烈な右足のシュートを放っている。

直後に迎えた5試合ぶりとなる勝利の瞬間。両手を雨空へ突き上げて、喜びを表現した石川の胸中にさまざまな思いが交錯する。果たして、それらは石川が待ち望んでいたものだった。

「ゴールも決めたかったし、アシストもマークしたかったけど、まずはピッチに戻ることだけを考えてリハビリを積んできたので。それら(ゴールやアシストは)次に取っておくというか、ピッチに立ったことでやりたいこと、できたこと、できなかったことなど、本当にいろいろなことが自分のなかに入ってきた。僕自身、そうなることはわかっていたし、そういうことを吸収できる体になって戻って来られたのが嬉しい。インプットされたものを今度はアウトプットしていけるように、また刺激を受けながら練習していきたい」

出場機会を求めて、マリノスから期限付き移籍で加入したのが2002年の春。翌年の夏には完全移籍に切り替えた石川は、気がつけばFC東京における最古参選手となった。

誠実で飾らない人柄。誰にでも優しいナイスガイ。そして、どんな逆境に直面しても、サッカーに対して貫いてきた真摯な姿勢。1年2ヶ月に及んだ今回のブランクを埋めた過程を、間近で見てきているからか。

「偉大なる先輩の復帰戦なので、勝ててよかった。みんなでナオさん(石川)のスタートをお祝いしたい」

試合後のヒーローインタビューでお立ち台にのぼった水沼が笑顔を輝かせながら力を込めれば、ともに呼ばれていた石川もあらためてスタートラインに立ったと強調している。

「シーズンの残り試合も少なくなってきましたが、僕の意地とFC東京の意地、プライドと誇りをもって最後まで戦いたい」

7月末に城福浩監督が解任されるなど、上位進出を期待されながら不本意な戦いを強いられてきた今シーズンのFC東京。あと少し待てば、プレーとメンタルの両方で頼りになるスピードスターが帰ってくる。
《藤江直人》
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