【THE REAL】川崎フロンターレを救った27歳の苦労人…GK高木駿がJ1初陣で花咲かせた努力の跡 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】川崎フロンターレを救った27歳の苦労人…GK高木駿がJ1初陣で花咲かせた努力の跡

オピニオン コラム

高木駿(川崎フロンターレ公式サイトより)
  • 高木駿(川崎フロンターレ公式サイトより)
心地よい武者震いと、ちょっとした違和感。異なるふたつの感情をその胸中に同居させながら、川崎フロンターレのゴールキーパー高木駿は利き足の左足からタッチラインをまたがせた。

ホームの等々力陸上競技場に横浜F・マリノスを迎えた、9月25日のJ1セカンドステージ第13節。明治大学から加入して5シーズン目。念願のJ1デビューは後半24分、夢にも思わなかった形で訪れた。

■「こういう状況になるかもしれないと準備していた」

自陣のゴール前における競り合いで、ゴールマウスを守っていた新井章太が後半開始早々に顔面を強打。治療を受けて何とかプレーを続行したものの、同20分すぎにはピッチ上に座り込んでしまう。

駆けつけたトレーナーが慌てて両手を交差させて、脳震とうを起こしていた新井の交代を告げる。マリノス戦で今シーズン初めてベンチ入りを果たしていた高木は、しかし、すでに心の準備を整えていた。

「(新井)章太さんがクラッシュしたときから、こういう状況になるかもしれないと準備していました。詳しいことはわかりませんけど、頭を打っていたように見えたので。いざ出番が来たときには、もちろん章太さんのことは心配でしたけど、やっぱり『よっしゃ』という思いが…こういうときのためにずっと練習してきたというのがあるし、こういうことでもない限り、なかなかチャンスは巡ってこないので」

緊急事態でも驚くほど冷静だった。不動の守護神、韓国代表のチョン・ソンリョンが大宮アルディージャとの前節で右ひざを負傷。代役として今シーズン初先発を果たした新井までが、退場を余儀なくされた。

試合はフロンターレが1点をリードしていた。デビュー戦がマリノスとの「神奈川ダービー」で、しかも途中出場という極めて難しい状況も、出場機会に飢えてきたこれまでの軌跡を振り返れば乗り越えられた。

心のなかで何度も「よっしゃ」と言い聞かせたのが心地よい武者震いならば、ちょっとした違和感は憧れのピッチを踏みしめた足から伝わってきた。別の意味で、高木の両足は小刻みに震えていた。

「気持ち的には落ち着いて試合に入れたんですけど、足がかなり緊張している、というのがあって…」

新井がプレー続行不可能になる直前に、マリノスのMFマルティノスがフロンターレのキャプテン、MF中村憲剛をファウルで倒していた。試合はフロンターレの直接フリーキックから再開される。

■「とりあえず一回、思い切って蹴ろう」

まずはボールに触って試合に慣れろ、とばかりにチームメートからボールを託される。しかしながら、足の状態を考えれば、まずまともに蹴れない。カクテル光線を浴びながら、高木は腹をくくった。

「とりあえず一回、思い切って蹴ろうと。普通にミスキックをしてしまったんですけど、逆に最初にあのミスをしてしまったから、あとは大丈夫だろうと変な考え方に切り替えて。実際、その後はしっかりとプレーすることができたので」

ボールをセットして、6歩距離をとる。助走をつけてから左足で放たれたボールは、大きくスライスしながら左タッチラインを越えていった。不思議と足の震えが収まっていくのを、高木は感じていた。

3シーズンで8回。マリノス戦を含めて、高木がJ1でベンチ入りを果たした回数だ。2014シーズンからは2年間、J2のジェフユナイテッド千葉へ期限付き移籍して自らに武者修行を課した。

ジェフではユースからの生え抜き、岡本昌弘と激しいポジション争いを繰り広げながら40試合に出場。自信を膨らませながら復帰した今シーズンも状況は変わらなかったが、高木がふて腐ることはなかった。

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《藤江直人》

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