今シーズンの始動を間近に控えた1月のある日。湘南ベルマーレのMF古林将太のスマートフォンが、おもむろに鳴った。電話をかけてきたのは曹貴裁監督だった。
「副キャプテンをやってくれと言われて。もちろん、わかりましたと伝えました」
小学生年代のジュニアから一貫してベルマーレで育った古林は、2010年シーズンにトップチームへ昇格。ザスパ草津での武者修行から復帰した2012年シーズンからは右ワイドを主戦場として、前への突破力と右足から放たれる鋭いクロスで「湘南スタイル」に不可欠の存在となった。
6シーズン目の24歳。ベテランの坪井慶介、ホープの遠藤航の両DFとともに、キャプテンのMF永木亮太をサポートする副キャプテンを任せるには適齢期でもあった。
しかし、一方で問題も抱えていた。昨年2月の練習で前十字じん帯を断裂して、全治7ヶ月の大けがを負った右ひざだ。
シーズンの終了間際に復帰したが、試合勘を含めて、万全とは言い難かった。古林に限らず、前十字じん帯を痛めた場合、完全復帰までは時間がかかることが多かった。
そうした事情を承知の上で、曹監督は古林に副キャプテンを託した。というよりも、けがからの復帰へ苦闘を意義なくされるからこそ、副キャプテンという肩書が必要だった。
なぜなのか。曹監督からこんな言葉を聞いたことがある。
「復調するのに時間がかかり、チームに関われない時間が続いたときに、副キャプテンという肩書がコバショウ(古林)をつなぎ止めるのではないかと」
浦和レッズをホームに迎えた3月7日のファーストステージ開幕戦こそ先発フル出場した古林だったが、案の定、その後は途中出場もしくはリザーブのまま試合を終える状況が続く。
覚悟はしていたが、なかなか上向いてこない体と心が乖離しかけたたこともある。
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《藤江直人》
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