パンクしたらチューブを補修できる「クリンチャータイヤ」と、チューブをゴムで包み込んで丸く縫い合わせた「チューブラータイヤ」があって、ボクは断然チューブラー派である。
クリンチャータイヤはWO(ワイアードオン)なんて言われた時代もあるが、一般的な自転車に採用されているタイプだ。メンテナンスが楽で、誰がセットしても設計された性能を発揮できるというメリットがある。
かつては廉価版というイメージがあったが、高性能モデルが続々と登場したことで、レースにも使われるようになった。パンク時には、穴の開いた部分をパッチでふさぐか、チューブをそっくり交換してしまう。
一方、チューブラータイヤはかつてプロ選手が走るレースで使われていたタイプだ。空気を入れるチューブが筒状になったタイヤの中に収納されている。つまり、タイヤは縫い込まれて筒状になっているので、パンク修理はほとんど不可能。
そのため、パンクしたらタイヤ全体を交換することになる。携行品もパンク修理道具やスペアチューブなんて小ぶりなキットでは済まされず、スペアタイヤそのものを用意する。
そんな時代遅れ的なアイテムなのだが、チューブラータイヤには一度味わったら捨てがたい乗り味があって、ボクを含めてその信者は多い。どうも年配者に多いという傾向があるようだ。
さて、チューブラータイヤがパンクしたときはどうしたらいいか。まずは涙ぐましいタイヤ交換のやり方を紹介したい。
(1)タイヤをはがす
リムと呼ばれる車輪の外周部分に強力に接着されているチューブラータイヤをはがすのは大変だが、ドライバーやカッターなどの工具を使ってリムを傷つけないように注意しながらタイヤをはがしていく。

カッターなどを使ってタイヤをはがす
(2)リムセメントを塗る
リムセメントと呼ばれる接着剤を薄く塗り、軽く乾くのを待つ。練習中などでリムセメントを持ち合わせていないときでも、リムに残っているものである程度は接着できるというが、もはやエマージェンシー時の手段なので、コーナリングなどは充分にスピードを落とす必要がある。
(3)タイヤをつける
バルブがまっすぐになるように視認しながら、タイヤを左右同じテンポと力加減で入れていく。つまり、最後にはめるのはバルブの反対側となるようにする。じつはこの作業がメチャクチャ大変。コツもいるしパワーもいる。自転車生活を送るなかで一番やりたくない作業だ。
(4)センターを出す
空気を軽く入れて、左右対称にタイヤが接着されているかをチェック。ねじれている場合は指でタイヤを引っ張ってタイヤ接地部が中心になるようにする。最後は揮発系クリーナーではみ出たリムセメントを掃除する。タイヤにクリーナーがつくと劣化してしまうので慎重に。
■リムセメント不要のチューブラーテープは救世主
すべての作業は強じんなパワーと繊細な処理が必要で、本当に気が抜けない。ここまでして自転車に乗りたいかといつも自問自答するほどで、お金を出しても専門店の熟練スタッフにやってもらったほうがいいと思う。
現在はリムセメント代わりのチューブラーテープが発売されていて、面倒なリムセメント塗りやセンター出しという作業は不要になった。使用方法はリムにテープを貼って、タイヤを装着する。センターを出した後で、ビニールを引き抜けばぴったりと装着できる。

ビニールを引き抜けばぴったりと装着!
■パンクしやすい人、しにくい人
パンクはどうしても避けられない場合もあるが、ライディングテクニックのありなしも大きな要因だ。めったにパンクしない人は、路面に充分な注意を払って走行していることが多く、パンクの原因となるガラス片などの障害物を察知してラインを変更したり、路面の段差を軽くジャンプしてクリアしたりできる。
「強い選手は余裕があるので、路面状況もよく見えるんです。走ることがイッパイイッパイの人はパンクしやすい」とプロメカニックから聞いたこともある。