【THE REAL】合言葉はJ1定着…モンテディオ山形のミラクル守護神・山岸範宏が誓う恩返し | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】合言葉はJ1定着…モンテディオ山形のミラクル守護神・山岸範宏が誓う恩返し

オピニオン コラム

モンテディオ山形の山岸範宏(2015年2月19日)
  • モンテディオ山形の山岸範宏(2015年2月19日)
  • 西川周作(2014年6月13日)
  • 浦和レッズ時代の山岸範宏(2010年5月5日)
子どもたちに「好きなサッカー選手は誰」と聞くと、決まってポジションが偏ってくる。ゴールを量産するストライカーか、華麗に攻撃を差配するトップ下。まばゆいスポットライトがあてられる選手に憧れる図式は、山形県においても変わらなかった。

2014年シーズンでいえば、前者がモンテディオ山形のチーム得点王になったディエゴ。後者が佳境の戦いで決定的な仕事をした川西翔太となるが、今では2人の間に意外なポジションの選手が割り込んできている。

「山岸の人気がすごいんですよ。それだけのインパクトを与えましたからね」

モンテディオの関係者が頼もしげに見つめるのはゴールキーパーの山岸範宏。地味に映ることが多い守護神への注目度が、右肩上がりに転じたのは2014年末のこと。言うまでもなく、日本サッカー史上で永遠に語り継がれるゴールと密接にリンクしている。

■「山の神」と崇められる存在へ

敵地で2014年11月30日に行われたジュビロ磐田とのJ1昇格プレーオフ準決勝。同点で迎えた後半アディショナルタイムに得たコーナーキックの場面で前線へ攻め上がり、ジャンプ一番、フィールドプレーヤー顔負けの完璧なヘディングを見舞ってネットを揺らしたのが山岸だった。

規定により引き分けでも敗退が決まるピンチで救世主となった山岸はその瞬間から、名前をもじって「山の神」と崇められる存在へ昇華した。

「あのゴールに関しては、他のチームの選手も含めて、本当にいろいろな人たちから聞かれました。いま思うのは、次の決勝戦で負けていたらただのサプライズゴールで終わっていたこと。その意味でも、あのゴールが結果的に昇格に繋がったことがとにかくうれしいですよね」



山岸範宏 (c) Getty Images


2014年6月に浦和レッズから期限付き移籍で加入し、4シーズンぶりのJ1復帰と天皇杯準優勝という大仕事を成就させた。モンテディオのゴールマウスを守りながら、山岸はある思いを抱いていた。

「いまだから言えますけど、オファーをいただけたら引き続きモンテディオでプレーしたいという気持ちがあったんです」

モンテディオも早い段階から完全移籍へ切り替え、どんな逆境に遭遇してもあきらめず、粘り強く戦い抜くチームスタイルの象徴として山岸を据える構想を抱いていた。まさに相思相愛。背番号が『31』から『1』へ変わり、正式にキャプテンを任されたいま、山岸は恩返しの思いを胸中に秘めている。

「昨シーズンの途中に新たなチャレンジの機会を与えてくれたモンテディオは、僕のキャリアを救ってくれたというか、新しい色をつけてくれた。そのことへの恩返しであり、このオフに完全移籍のオファーをもらったことへの恩返しでもある。僕自身、昇格しただけでは絶対に満足できない。いまの自分にできる最大値のプレーを続けていくことで、ひとつずつ恩を返していきたい」

■レッズ時代の山岸のリーグ戦出場は161試合

日本代表の常連でもある西川周作の控えに甘んじ、ベンチ入りすら果たせなかった山岸は、出場機会を得られるならば2001年シーズンから在籍してきたレッズを飛び出す覚悟を固めていた。一方のモンテディオは開幕からレギュラーを務めてきた清水健太(現カマタマーレ讃岐)が負傷離脱する非常事態を前にして、ピッチでリーダーシップを発揮できるゴールキーパーを求めていた。



西川周作 (c) Getty Images


両者の思いが完璧にシンクロしたがゆえに成立した期限付き移籍だったが、新天地ですぐに首脳陣の信頼を勝ち取り、ゲームキャプテンをも託された山岸のロードバックはもっと評価されていい。

レッズに在籍した13年半で、山岸のリーグ戦出場は161試合にとどまっている。決して多くない数字だ。イビチャ・オシム元監督のもとで日本代表に招集される実力を持ちながら、レッズでは都築龍太、加藤順大、そして西川との熾烈なポジション争いを強いられてきた。

それでも決して腐らず、日々の練習からサッカーに対して真摯に向き合ってきたからこそ、ハイパフォーマンスを維持することができた。シュートへの反応の速さとセーブする技術。ハイボールやクロスへの対応。堅実なプレーとコーチングの質の高さで、チームに落ち着きと安心感を与えた。

レッズでの日々を、山岸は感謝の思いを込めながら振り返る。

「レッズでは悔しいことのほうが多かったけど、その悔しさがいまの自分のエネルギーになっているのかなと。タイトル獲得や大一番での勝利を含めて、本当にいろいろなことを経験させてもらったし、それらが僕のベースになっているんです」



浦和レッズ時代の山岸範宏 (c) Getty Images


あきらめなければ必ず道は開ける。人生訓にも通じるものがあるし、貫き通してきたポジティブな姿勢は、冬場の過酷な環境を耐え忍びながら春の訪れを待つ雪国・山形の県民気質も反映している。モンテディオのファンやサポーターに愛され、子どもたちから憧憬の視線を寄せられるもうひとつの理由がここにある。

「昨シーズンの後半に体現できたことを、自信をもってJ1の舞台で発揮していきたい。たとえ苦しい試合が続いたとしても、自分たちが積み上げてきた『山形らしさ』を見失わないことが大事なんです。自分たちの原点に対してぶれなければ、すぐに軌道修正することができますからね」

2015年シーズンの目標はJ1に残留して、長く定着していくための足がかりとすること。過去にプレーオフを勝ち抜いてJ1昇格を果たしたチームは、すべて1シーズンでのUターンを余儀なくされてきた。5月に37歳となる山岸が最後尾で放つ大きな存在感が、負のジンクスを打破するための羅針盤となる。
《藤江直人》

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