チームの歴史にその名を残すプレーヤー、いわゆる「レジェンド」のシンボルだった背番号をいまも大切にしているJクラブは少なくない。
たとえばセレッソ大阪。森島寛晃から香川真司、清武弘嗣と受け継がれ、昨夏に柿谷曜一朗がバーゼルへ移籍した後は、「背負うのにふさわしい選手がいない」という理由で空き番としている「8」番は、その典型的な例といっていいだろう。
そして、ガンバ大阪とともに今シーズンのACLのベスト8に進出している柏レイソルにも、神聖なる背番号が存在する。
サポーターから「ミスター・レイソル」として愛された北嶋秀朗さん(現ロアッソ熊本コーチ)が、通算10シーズンにわたって背負ってきた「9」番がFW工藤壮人に受け継がれて、今年で3シーズン目になる。
迎えた7月19日。背番号「9」の持ち主として臨んだ通算87試合目。ホームで川崎フロンターレと対峙した前半15分に、工藤は追い求めてきた称号を手に入れる。
■背番号9は「僕しかいない」
柏レイソルU‐18の後輩、MF小林祐介からのスルーパスに反応して最終ラインの裏へ抜け出し、相手GKと1対1になった直後だった。
「1対1には自信がある。GKの股が開くのを待って冷静に流し込みました」
0対0の均衡を破り、チームにファーストステージを通じて初の連勝をもたらす技ありの今シーズン7点目は、工藤にとってJ1通算53ゴール目。北嶋さんが保持していた52ゴールを抜いて、レイソルのJ1最多得点記録保持者として名前を刻んだ瞬間だった。
北嶋さんがシーズン途中にJ2のロアッソへ期限付き移籍し、シーズン終了後に完全移籍に切り替えた2012年のオフ。育成組織から昇格して4年目、当時22歳の工藤は北嶋さんの象徴だった「9」番を背負いたいとフロントへ直訴している。
そのときの心境を聞くと、こんな言葉が返ってきたことがある。
「僕しかいない、絶対に僕が背負うんだという強い気持ちでいたので」
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《藤江直人》
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