一瞬の判断ミスが失点へとつながり、地獄へと突き落とされる。国内リーグや年代別の代表戦とはまったく異なる厳しさを、21歳の京川舞(INAC神戸レオネッサ)は味わわされたはずだ。
中国・武漢で開催されている東アジアカップ。韓国女子代表と対峙した5日の第2戦は1対1のまま、4分間が表示された後半のアディショナルタイムに突入していた。
日本のペナルティーエリアの左隅でこぼれ球を拾ったFWチャン・スルギが、日本のゴールから遠ざかる方向へドリブルを始める。体勢を立て直そうとしているINAC神戸のチームメイトを、しかし、追いかける京川は必要以上にタイトにマークしてしまう。
ボールを奪ってカウンターを仕掛けられる、という予感がはたらいていたのか。チャンの背後から強引に体をねじ込もうとした瞬間に、京川は不用意にも手を使ってしまった。
すかさず鳴り響く主審のホイッスル。ゴールまで約20m。約45度の難しい位置から鮮やかに決まったMFチョン・ガウルの直接フリーキックが、なでしこの連敗と優勝の消滅を告げた。
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13番・京川舞
ファウルを犯した瞬間から表情をこわばらせていた京川は、試合後にこんなコメントを残している。
「あの時間帯で他にも味方がいたので、自分が行かなくてもよかった。反省です」
チャンの対面には、MF横山久美(AC長野パルセイロ・レディース)が立ちはだかろうとしていた。自陣のペナルティーエリア付近で余計なファウルを与えることなく、京川と横山とではさみ込んでチャンの自由を奪う。こうしたプレーが、あの場面におけるセオリーだった。
準優勝した女子ワールドカップから約1カ月。カナダの地で戦ったメンバーの招集を6人だけにとどめ、代表歴の少ない若手や中堅を抜擢した顔ぶれを、佐々木則夫監督は「チャレンジなでしこ」と命名。そのうえ熱いエールを送っていた。
「最低でも3分の1に、来年のリオデジャネイロ・オリンピックに関わってきてもらいたいと思う」
京川にとって、東アジアカップは実に3年5カ月ぶりとなるなでしこジャパンへの招集だった。前回は女子サッカー界の名門校、常盤木学園の卒業を目前に控えていた18歳。自他ともに認めるゴールハンターとして、ロンドン・オリンピックの前哨戦となるアルガルベカップに臨んだ。
【京川舞が胸中に同居させた悔しさと二刀流への決意 続く】