たとえば2014年6月1日。浦和レッズからブンデスリーガのヘルタ・ベルリンへ完全移籍した原口元気が、壮行セレモニーで発した締めの言葉はこうだった。
「チームメイト、監督、スタッフ、アカデミーのスタッフ、家族、友人、恋人、そしてこの最高の浦和レッズのサポーター。本当に心から感謝しています。ありがとうございます!」
文言を注意深く読んでいくと、「ん?」と再確認したくなる単語に遭遇することがおわかりだろうか。
実際、埼玉スタジアムのピッチの中央でスポットライトを浴びる主人公を発信源として、万感の思いが伝播していった直後に、その場にいた誰もが思わずのけぞった。チームカラーのレッドに染まったスタンドが、大きくどよめいたのも無理はない。
感謝の思いを伝える一人に「恋人」が加えられたことに、公私両面で原口を弟分のように可愛がってきたDF槙野智章は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「あれは要らないよね。結婚していれば家族と言えますけど、なかなか恋人とは言えないですよね」
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