条件を掛け合わせるほどに生まれる確率が下がっていく、兄弟による同一チーム、同一試合でのアベックゴール。創設されてから23年目を迎えたJリーグにおいて、4組目が誕生した…と誰もが思った瞬間があった。
8月8日にニッパツ三ツ沢球技場で行われたJ2第28節。敵地に乗り込んだ東京ヴェルディが、キックオフ直後から横浜FCが守るゴールへ襲いかかる。
左サイドを駆け上がったFW杉本竜士がファーサイドへ送ったクロスを、FW高木大輔が頭で叩き込む。成長著しい19歳が3試合連続ゴールを決めた瞬間、時計の針はまだ1分に達していなかった。
大輔は前半24分にも、ゴール前の細かいパス交換から抜け出して右足を一閃する。強烈な弾道は相手ゴールキーパーに防がれたが、こぼれ球に誰よりも素早く反応。今度は左足でネットを揺らした。
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高木善朗 参考画像
大輔の3歳上の兄で、清水エスパルスから7月15日に期限付き移籍でヴェルディへ加入した善朗は、躍動する大輔をベンチで見ながらデジャブを覚えていた。
「決してうまくはないけど、最後のところでしっかり仕事をするところは、小さなころから変わらないな」
一方の大輔は、自らの1ゴール1アシストでチームを4連勝へと導いた前節のカマタマーレ讃岐戦後に、こんな言葉を残していた。
「次は三ツ沢での試合なんですけど、兄貴ふたりが初めてアベックゴールを決めた場所なんですよね。何だかいい流れがきているような感じがするんです」
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高木善朗 参考画像
2010年9月12日。横浜FCに3点差をつけられていたヴェルディは後半31分に善朗が、同アディショナルタイムには長男の俊幸(現浦和レッズ)がゴールを決めて必死に追い上げる。
試合はそのまま敗れたが、和幸と浩司の森崎兄弟(サンフレッチェ広島)、功治と幸宏の山瀬兄弟(当時横浜F・マリノス)に続く快挙は、いまも記録とファンの記憶に残っている。
加えて、当時19歳の俊幸と17歳の善朗の合計年齢は、森崎兄弟と山瀬兄弟のそれを下回っていた。ふたりはそのシーズンだけで、3度も兄弟アベックゴールを達成している。
当時はヴェルディのジュニアユースに所属し、トップチームで輝きを放つふたりの兄の背中を追いかけていた大輔も、心中に期するものがあったはずだ。いつか必ず兄貴たちと一緒にゴールを決めてみせる、と。
【東京ヴェルディを輝かせる高木善朗&大輔 続く】