敵地に乗り込んだ4月24日のJ1首位攻防戦。1-0のスコアながら内容では浦和レッズが攻守両面で川崎フロンターレを圧倒した90分間の中心で、今シーズンから加入した23歳の笑顔が弾けた。
■新天地で見せる輝き
3バックの真ん中で最終ラインをコントロールしながら全体の守備をオーガナイズし、攻撃の起点にもなる。威風堂々としたたたずまいからは、すでに何年もレッズでプレーしているかのような錯覚を覚える。
試合後の取材エリア。新天地に順応するどころか、すでに中心選手としての輝きを放っている点を本人にぶつけてみた。遠藤は照れ笑いを浮かべながら、自らを律することを忘れなかった。
「自分のよさを生かせるのは浦和だと思って移籍してきたのもあるし、抱いてきたイメージ通りにいまはプレーできている感じもある。やりやすさは感じていますけど、まだまだ課題はあるし、もっともっとよくなっていくという手応えもある。いい結果が出ているときこそさらに謙虚さをもちながら、さらに成長していけるようにしたい」
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浦和レッズの遠藤航(中央)
リーグ戦の全8試合で先発フル出場している5人のひとり。もっとも、ジュビロ磐田との第2節の後半からポジションを3バックの右からいま現在の真ん中へと変えている。
そのジュビロ戦こそ敗れ、現時点で唯一となる黒星をつけられたが、第3節以降は5勝1分け。そのうち4試合でクリーンシートを達成する安定感を得たレッズは、フロンターレを抜いて首位に躍り出た。
1対1の攻防を制し、ボールを前へ運んで攻撃にも絡む役割から、カバーリングを意識しながら洞察力を駆使して、常にポジション取りに神経を使い続ける役割へ。180度異なる仕事にも違和感はない。
「読みは自分のよさだと思っているし、(前の選手が)あれくらい早く攻守を切り替えて、パスの出どころに行ってくれるので、自分としても狙いやすいというのもあります。フロンターレのようにうまい選手がいるなかで、自分がどこでどのようにしてボールを奪うのかという連動性は、後ろからオーガナイズしていく面白さでもあるし、やりがいを感じている点でもある。もちろんすべてのボールを奪うことはできないと割り切りながら、奪えないときは焦って飛び込まないことも意識してやっています」
昨シーズンまでプレーした湘南ベルマーレでは、3バックの右を主戦場としてきたイメージが強い。しかし、プロにおける第一歩は、いま現在と同じ3バックの真ん中で踏み出している。
ユースに籍を置いたままトップに帯同できる、2種登録選手としてJ1でデビューしたのが2010シーズン。当時の反町康治監督(現松本山雅FC監督)、後を継いだ曹貴裁監督は遠藤をリベロとして重用してきた。
ピンチでも動じない安定感は、いい意味での「ふてぶてしさ」も感じさせる。しかし、J2を戦った2012シーズンには19歳にしてキャプテンの大役も託した曹監督はあるとき、ハッと我に返った。
「まだ若く、大きな可能性のある選手に最終ラインやゲーム全体のコントロール、カバーリングといった仕事ばかりをやらせるのは、いくらチーム事情とはいえよくないのではないか」
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