■大騒動に発展した張本勲氏からの引退勧告
時は流れ、現在は解説者を務める張本氏からテレビ番組で引退を勧告された。
「スポーツマンとしてもう魅力がないしね。若い選手に席を譲ってあげないと」
舌鋒鋭く連発された張本氏の「ダメ出し」は、インターネットの掲示板を炎上させる大騒動に発展した。しかし、カズは反論に応じるどころか、いまも自身の心に宿らせる、かつてのヒーローへの憧憬の思いと感謝の念を明かすことで状況を瞬く間に鎮火させた。
「いろいろな考え方があるし、厳しいことを言ってもらえるのは選手として幸せなこと。僕を成長させてくれる言葉だと思うし、そういうプレッシャーがなければ自分自身に甘えてしまうこともあるので」
これには張本氏も、翌週の番組で「喝!」を「あっぱれ!」に変えるしかなかった。しかし、同時に不世出のスーパースターである長嶋氏とカズの競技人生をダブらせた上で、こんな言葉も残している。
「長嶋さんの晩年のプレーを見ていて、『もういいでしょう』と思ったこともあるんですよ」
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三浦知良(1994年)
産声をあげたばかりのJリーグに世の中が熱狂し、日本代表がまだ見ぬワールドカップへ向けて快進撃を続けた1990年代の前半。ヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)と日本代表で、記録と記憶に残るゴールを決め続けたカズの勇姿を取材しながら、古き良き昭和の時代に思いを馳せたことがある。
「長嶋さんもカズのようなパフォーマンスで、高度経済成長期だった日本を奮い立たせたんだろうな」
あれから20年あまり。アスリートの宿命でもある肉体の衰えを自覚するたびに、カズはトレーニングの内容やプレースタイルを変えて危機を乗り越えてきた。
最初に異変を感じたのは30歳から31歳にかけての頃。結果として、夢にまで見てきたワールドカップの舞台に立つチャンスを逃した。
「それから37歳くらいで一度あって、42歳か43歳のときにもう一度あって。体との対話というものをずっと続けてきたなかで、48歳になったいま、また感じるものがあるけどね」
【伝説を刻み続ける48歳…キングカズが輝きを放ち、愛され続ける理由を探る 続く】