【THE ATHLETE】進化を続けるオコエ瑠偉…甲子園のスターから、東北の韋駄天へ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】進化を続けるオコエ瑠偉…甲子園のスターから、東北の韋駄天へ

オピニオン コラム

プロ初打席に向かうオコエ瑠偉(2016年3月26日・コボスタ宮城)
  • プロ初打席に向かうオコエ瑠偉(2016年3月26日・コボスタ宮城)
  • オコエ瑠偉(2016年3月26日・コボスタ宮城)
短くも長いオフシーズンを終え、3月25日にセ・パ両リーグが一斉開幕を迎えたプロ野球。この日を待ち望んでいた野球ファンが球場に詰めかけ、スタジアムには久しぶりに熱気と活気が戻ってきた。

開幕戦の日、私は仙台にいた。コボスタ宮城で行われる楽天イーグルス対ソフトバンクホークス戦を観るためだ。この試合は他球場よりも2時間早い16時プレーオフだったが、それでも3月下旬の宮城は寒く、入場者プレゼントで配られたポンチョを着ている観客の姿が目立った。

大変なのは観客だけではない。暖かい福岡から春先の東北にやって来たソフトバンクは、寒暖の差に調整が難しかったか先発の攝津正投手が不調、ピンチで踏ん張れず開幕戦を3-7で落とした。

楽天側から見ると、打線が昨シーズンまでにはない勝負強さを披露し、立ち上がりの不安定さが心配された則本昂大も尻上がりに調子を上げ、今後にも期待が持てる展開だった。

期待といえば、この試合で改めて感じたのは、オコエ瑠偉にかける楽天ファンの期待の大きさだ。

■球団初、高卒野手の開幕1軍デビュー

七回裏に四球でジョニー・ゴームズが出塁すると、一塁代走として開幕戦で1軍初出場を果たしたオコエ。その瞬間にコボスタ宮城の三塁側スタンドが沸いた。

関東第一高校で2年の春からスタメンに定着すると、3年の夏に東東京大会を制し甲子園に出場。抜群の身体能力で注目され、その期待に違わぬ活躍を披露した。卒業後はプロ入りを希望し、楽天からの指名を受けて入団。注目される中でのプロ入りとなったが、1年目からの活躍を期待しての獲得というわけではなかったはずだ。

高卒1年目というのは何かと課題が多い。フルシーズン通して戦えるだけの体力作りが必要な上、当然ながらプロのプレーはあらゆる面で高校生とはレベルが違う。球速だけならプロ顔負けの数値を出す高校生も希にいるが、変化球やコントロール、相手の読みやタイミングを外す投球術といった技巧的な面では大きな差がある。

オコエもオープン戦では苦戦、打率1割台で前哨戦を終えた。プロの高い壁を感じる結果となったが、一方で得点圏では印象的な活躍を残し、15日の西武戦では決勝打も放っている。

もともと梨田昌孝監督はオコエの開幕1軍に打率.255というノルマを課していた。この課題はクリアーできなかったが、得点圏での勝負強さと守備や走塁を評価して高卒新人野手1軍デビューが決定した。

オコエは26日に行われたシーズン2試合目で、さっそく持ち味の足をアピールする。



■執拗な警戒の中で決めたプロ初盗塁

八回に代走で出場したオコエ。岡島豪郎が内野ゴロに打ち取られ、オコエは二塁でアウトになったが、そのまま中堅手の守備に就く。

オープン戦ではフライを見失い、アピールポイントであるはずの守備でミスが出た。しかし、この日は九回表に飛んできた2本のフライをキャッチ、そのたびに楽天側のスタンドからは大きな歓声があがった。

延長十回にはプロ初打席も回ってくる。四球を選び出塁するとスタンドはヒートアップ、盗塁を期待するファンの声援がこだました。ソフトバンクバッテリーも足を警戒。執拗に牽制を繰り返しヒヤッとするタイミングで帰塁するたび、声援に安堵の溜息が混じる。

「粘れオコエ!」の声に応えるかのように、一塁ベース上で静かな攻防を繰り広げる。そしてエディソン・バリオスが岡島に投じた4球目、思い切ってスタートを切ると迷わず二塁に滑り込んだ。

米村理守備走塁コーチとともにキャンプから、よりベースに近い位置で突き刺すように滑るスライディングを練習してきたオコエ。その成果を見せるプロ初盗塁に「今までのスライディングだったらアウトだったと思う」と、自分でも成長を実感していた。

オープン戦でミスが出た守備でも、コーチとともに練習を繰り返してきた。とにかく向上心が強く、課題にも真面目に取り組んでいる。

開幕カードで仙台を沸かせたオコエだが、本人も「レベルを上げていかないと」と話すように、まだまだ乗り越えなければならない壁は多い。それでもファンは成長を続けるオコエに大きな期待をかけ、今後も一挙手一投足を見守り続けるだろう。
《岩藤健》

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