イチロー「後退も成長に向けたステップ」…打撃フォームを変え続ける理由 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

イチロー「後退も成長に向けたステップ」…打撃フォームを変え続ける理由

オピニオン ボイス
イチロー(2015年8月3日)
  • イチロー(2015年8月3日)
  • トヨタ豊田社長、イチローとサプライズ共演(東京モーターショー15)
  • イチロー 参考画像(2015年9月29日)
10月に行われた東京モーターショーのトヨタブースに、メジャーリーガーのイチロー選手(マイアミ・マーリンズ)がゲストとして登場した。豊田章男社長によるプレゼンの途中に起きたサプライズだった。

グローバルで生き抜くイチローと豊田社長。両者の言葉には共通するものがあった。

●豊田章男社長

『WHAT WOWS YOU?』あなたの心を動かすものはなんですか。

これが、今年の東京モーターショーでのトヨタのテーマです。

今から100年前、T型フォードが登場するまで、アメリカでは人やモノを運ぶために多くの馬がいました。その後、わずか20年の間に、すべての馬がクルマに置き換えられたといいます。

なぜ、人々はクルマを選んだのでしょうか?

色々な理由はあるでしょうが、馬に乗るよりもクルマを運転する方が楽しかったからだと言われています。

クルマの存在そのものが『WOW』だったのかもしれません。

そして今から80年前、豊田喜一郎は『日本人の頭と腕で国産車をつくりたい』『日本に自動車産業をつくりたい』こういった思いでトヨタという会社を設立いたしました。

技術力は欧米に比べ何十年も遅れているばかりか、倒産の危機に瀕し、お金もなかったと聞いております。喜一郎と彼の仲間の頭の中にあったのは、『国産車を自分たちの手でつくって日本を豊かにしたい』『みなさまにWOWをお届けしたい』そんな思い、情熱だけだったのではないでしょうか。

時を渡り、いま私たちのお客様は世界中に広がりました。私たちのクルマが走る世界中の街をもっともっと楽しくしていくこと。これが私たちトヨタの使命だと思っております。

この度トヨタが東京モーターショーに出展したクルマには共通点があります。それは『もっといい車をつくりたい』という思いを胸に、自分たちの考えるWOWを形にしようとしたことです。

今の非常識を次の常識に変えるチャレンジでもあります。

ハイブリッドカー、燃料電池車、かつてこれらは非常識なものでありました。非常識はやがて常識になり、居心地のいい場所になる。

しかし、この居心地のいい場所から抜け出すことができなければ次への発展はありません。

私たちは生きていく中で、『できない』『無理だ』と諦める理由はいくらでもあります。

ゼロ打数ゼロ安打ではなにも変わらない。

ヒットを打てるかどうかなんてわからないんです。それでも打席に立たなくては『WOW』は起こせないことを、私たちに教えてくれた方がいます。東京にお越しいただきました。


●イチロー選手、登場

こんにちは。イチローです。

えー、野球をやっています(笑)。

僕は実はですね、クルマの運転、まったくうまくありません。でも、クルマが大好きなんです。ですから、本日東京モーターショーに招待していただいたことを嬉しく思っています。

僕は毎年バッティングホームを変えるようにしています。例え首位打者賞を獲ったり、誰よりもヒットを打ったとしても、次の年にはフォームを変えるようにしています。今よりも前に進むためには常に新しいチャレンジが必要だと信じているからです。

そのために前の年よりもうまくいかなくなったり、躓くことも沢山あります。むしろその方が多いのかもしれません。

でも、僕はこう思うんです。「成長することは、まっすぐ前に進むことではないのではないか」。むしろ、前進と後退を繰り返し、少しだけ前に進む。つまり、後退も成長に向けた大切なステップなんじゃないだろうか。

TNGAという新しいクルマづくりをプリウスがやってきた。それを聞いて、トヨタは大きくバッティングフォームを変えてきた、と感じました。

トヨタの首位打者ともいえるプリウスが大胆にフォームを変えてきた。世界はまったく違いますが、僕とどこか似ているところがあるな、と思いました。

『グローバルに戦う』というのは本当に大変なことです。新しいことにチャレンジしなければ生き抜くことはできない。僕はそんな思いでバッターボックスに立つことにしています。

トヨタが今後、どんな『WOW』を起こすのか。注目しています。

僕はクルマが本当に大好きです。トヨタだけではなく、多くのメーカーがもっともっとチャレンジをして、クルマがもっと面白くなることを心から期待しています。

信じられない緊張感の中(笑)、ご清聴、ありがとうございました。


●豊田社長、再登壇

イチロー選手は常に新しいチャレンジをしています。

また、普段の練習から、バットやグラブの手入れまで、誰よりも念入りに準備を重ねます。一旦バッターボックスに入れば、けっして言い訳をせず、すべてを自分の責任として受け入れる。イチロー選手のそんな姿勢に心から感銘を受けました。

プレーするフィールドは違いますが、トヨタの企業方針もこうありたいと思っています。

2020年、東京オリンピック、パラリンピックが開催されます。

これは日本国民全員がバッターボックスに入るようなことだと思っています。選手、大会を支える企業、組織、国民一人ひとりが、『世界中にWOWをお届けするんだ』という思いを共有し、それぞれのバッターボックスに入っていくことが重要なのだと思います。

私たちトヨタはもっともっといいクルマをつくり、モビリティ社会の実現を目指します。『WHAT WOWS YOU?』それは、勇気をもってチャレンジすること。我々はこれからもずっとバッターボックスに立ち続けたいと思います。
《編集部》

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