2014年シーズンは前述したように、ガンバとの直接対決に敗れてから大失速。後半アディショナルタイムの失点でサガン鳥栖と引き分け、名古屋グランパスとの最終戦でも苦杯をなめて涙を飲んだ。
「昨シーズンも終盤でどうのこうのと言われたけど、その悔しい思いがあるからこそ、こういう結果を出せたと思っている。昨シーズンも我慢と言っていたけど、今シーズンは攻撃でも守備でも、我慢するところでさらに我慢できるようになった」
昨シーズンまでは先制されると焦燥感ばかりを募らせ、前掛かりになった背後をカウンターで突かれて失点を重ねた。先制された8試合は2勝2分け4敗と、逆に墓穴を掘ってきた。
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阿部勇樹
翻って今シーズンは、6試合で先制されながら4勝2分け無敗をキープしている。総得点39のうち後半に28点をマークするなど、90分間をトータルで考えられる冷静さを身につけた。
引き分けでも優勝、という状況で迎えた6月20日。5連敗と苦手としていた敵地ノエビアスタジアム神戸で行われたヴィッセル神戸戦でレッズを鼓舞したのは、ゴール裏のスタンドを真っ赤に染めたサポーターの存在だった。
後半30分に2枚目のイエローカードをもらったMF宇賀神友弥が退場。数的不利になった状況で1対1の同点とされ、その後もあわや逆転のピンチが何度も訪れたなかで、敵地を揺るがした大声援がどれだけ支えになったことか。
阿部自身も後半40分すぎに相手選手と激しく激突。頭を強く打ちつけた影響で足元がふらつく場面もあったが、すでに交代枠を使い切っていた状況を理解していたのだろう。最後まで歯を食いしばってボールを追いかけ、試合終了の笛が鳴り響くと同時に両手でガッツポーズを作った。
「今年は試合中に頭を打つことが多くて。一瞬(記憶が)ポーンと飛んじゃったけど、今年は何回も経験しているから大丈夫です。変によけるとかえって危ないので、どうしたら上手く当たりながらよけられるのかを考えながらプレーしていますけどね」
言葉に出さなくとも、阿部の立ち居振る舞いからは何度も「我慢」の二文字が伝わってきた。背中で熱く語る――これこそが阿部流のキャプテンシーの体現方法といっていい。
【阿部勇樹に導かれた浦和レッズの無敗ステージ優勝 続く】