【THE REAL】遅咲きのストライカー、浦和レッズ・興梠慎三が描く夢…リオの地で最高の誕生日を 3ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】遅咲きのストライカー、浦和レッズ・興梠慎三が描く夢…リオの地で最高の誕生日を

オピニオン コラム
興梠慎三 参考画像
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◆30歳で挑む五輪

開幕直前の7月31日に、30歳の誕生日を迎える。これまでに10人のオーバーエイジが五輪本大会へ招集されてきたが、30歳で4年に一度のヒノキ舞台に臨む選手は興梠が初めてとなる。これには興梠本人も苦笑いを隠せない。

「いやぁ、それは知らなかったです。まあ、(招集されるのは)ありがたい話なので」

宮崎県の強豪・鵬翔高校から2005シーズンにアントラーズへ加入。2007シーズンから幕を開けた前人未到の3連覇に貢献し、2013シーズンから移ったレッズでは3年連続で2桁ゴールをマークしてきた。

安定した成績を残してきた興梠にとって、リオデジャネイロ五輪は初めて臨むメジャーの国際大会となる。出場資格のあった2008年の北京五輪は代表候補で終わっていた。日本から見てちょうど地球の裏側となるリオデジャネイロの地で、遅咲きの花を咲させようとしている。

「向こう(リオデジャネイロ)で誕生日を迎えるということで、やっぱり特別な感情移入があると思うし、だからこそ自分で祝えるような結果を残したいですね」

アントラーズでレギュラーを獲得した2008シーズンには、岡田武史監督に率いられるA代表にも招集された。初めてキャップを獲得した同年10月9日のUAE代表との国際親善試合では、FW岡崎慎司(当時清水エスパルス)もデビューを果たしている。

約8年もの歳月がたったいま、同じ1986年生まれの岡崎はA代表史上で2人目しか達成していない通算50ゴールに王手をかけ、レスター・シティの一員として奇跡のプレミアリーグ制覇もなし遂げた。

同じく1986年生まれのMF本田圭佑(当時VVVフェンロー)、DF長友佑都(当時FC東京)もこの年に代表デビューを果たしている。2度のワールドカップにおける戦いをへて、3人はいまもハリルジャパンの中心として輝きを放っている。

翻って自分自身はどうか。国際Aマッチは通算で16試合に出場しているが、得点はゼロ。国内組だけで臨んだ昨夏の東アジアカップで代表に復帰するまで、実に4年ものブランクが生じていた。

岡崎や本田、長友といった同期生と自分自身を比較したとき、真っ先に思い浮かぶのはライバル心でも刺激を受けるといった類の言い回しでもなく、「すごい」という言葉だと興梠は屈託なく笑う。

「いや、本当に『すごい』のひと言に尽きますよ。所属チームで活躍すれば代表に呼ばれるチャンスはあるし、実際、代表入りはそれほど難しいことではないと思うんです。ただ、代表に居続けることはめちゃくちゃ難しい。完全に定着している彼らに対して、その意味ですごさを感じますよね」

所属チームに注いできた熱い思いとは対照的に、実は代表チームに対するスタンスがやや淡泊というか、無欲な部分があった。自らの体に宿る国際基準のポテンシャルに、鈍感だったといってもいい。

「プロサッカー選手になって以来、鹿島アントラーズのため、そして浦和レッズのために頑張ってきた興梠選手に、このタイミングで日本のために輝いてほしい。そして、2018年のワールドカップ・ロシア大会での活躍をものにできる可能性を高めてほしい」

リオデジャネイロの舞台からさらに羽ばたいてほしいと手倉森監督もエールを送るが、興梠本人は「ない、ない、ない。まったくないです」と苦笑いを繰り返す。

「いまはチームとオリンピックのことしか考えていないので」

レッズを離れ、U-23日本代表の一員になるまで残りは2試合。少しでもレッズに置き土産を残したいという思いから、絶対になし遂げておきたい個人的な仕事がある。

「あと1点なので、そこは多分、大丈夫でしょう。通算100ゴールは厳しいけど、今年中には絶対に達成したいので、(リオデジャネイロに)行くまでにちょっとでも取っておきたいですね」

現在9ゴールで、アントラーズ時代から数えて5シーズン連続の2桁ゴールに王手をかけている。通算ゴール数も95に伸ばし、史上12人目、日本人選手では8人目の大台到達へ秒読み段階に入った。

昨シーズンの開幕から興梠がゴールすれば、14勝3分けと不敗神話が続いている。レッズをセカンドステージの優勝戦線に導き、リオデジャネイロでの一世一代の戦いに弾みをつけて臨むためにも、異能のエースは13日のベガルタ仙台戦、そして17日の大宮アルディージャとの「さいたまダービー」に全力を尽くす。
《藤江直人》

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