【THE ATHLETE】アレナドが決意のヘッドスライディング…メジャー二冠王がWBCに本気を見せる理由 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】アレナドが決意のヘッドスライディング…メジャー二冠王がWBCに本気を見せる理由

オピニオン コラム
ノーラン・アレナド(2016年9月23日)
  • ノーラン・アレナド(2016年9月23日)
  • 第1回WBC 日本が優勝(2006年3月20日)
  • 第1回WBC 決勝で日本に敗れたキューバ(2006年3月20日)
  • バスター・ポージー(2017年3月10日)
  • ノーラン・アレナド(2017年3月10日)
「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)の1次ラウンドが始まり、3月10日は初優勝を目指す野球大国アメリカがコロンビアとの初戦に臨んだ。苦しみながらも3-2で勝利したアメリカ。この試合で一際目を引いた選手がいる。

アメリカ代表の3番を任されたノーラン・アレナド内野手(コロラド・ロッキーズ)だ。メジャーで2年連続ホームランと打点の二冠王を獲得している強打者。しかも、2年とも40本塁打と130打点をクリアーしている。

アレナドは1点ビハインドの2アウトニ、三塁から打席に入ると5球目のスライダーを空振り。だが捕手がボールを後ろに逸らしたのを見て一塁へ全力疾走。頭から滑り込み振り逃げで同点にした。


この全力プレーを生んだ背景には彼の球歴や生い立ちがある。

■挫折を乗り越えた悲願の米国代表入り

キューバ出身の父とプエルトリコ系の母親の間に生まれたアレナドには、今回のWBCでプエルトリコ代表としてプレーする選択肢もあった。だが彼はチームUSAを選択した。

そこにはジュニア時代に米国代表の選考で落選した過去が影響している。

「僕はチームの一員になれなかったんだ。彼らはほかの選手を選んだんだよ」とアレナドは当時を振り返った。

「僕は長いこと傷ついていた。若くして打ちのめされたんだ。だけど、より一層の努力をして再びチャンスを得ようと燃えた。いま僕はここにいる。WBCでプレーするんだ」

アレナドは家族のことにも言及し、アメリカを代表できることは誇りだとも語っている。

アレナドはアメリカ代表の誇りを背に
(c) Getty Images

「僕の父親はキューバ出身。母親の家族はプエルトリコ人だ。しかし、両親ともアメリカ市民であることを誇りに思っているし、この国にも誇りを感じている。僕はカリフォルニアで生まれた。ドジャースタジアムからそれほど離れてない場所だ。そして僕たち家族は全員、野球が好きなんだよ」

■日本初優勝の裏で芽生えた大会への想い

初戦を控えた3月9日にはメジャーリーグ公式サイト『MLB.com』で、アレナドは「ワールド・ベースボール・クラシックの最大のファンかもしれない」と取り上げられている。

前述したようにアレナドの父はキューバ出身。そして2006年の第1回WBC決勝は日本対キューバだった。日本が10-6で勝った試合をアレナドは家族とともに見ていた。

「家族が本当に悲しんでいたのを覚えている。応援しているチームがワールドシリーズで負けたかのようだった」

パーティー気分が意気消沈していくのを見て、この大会には何か重要なものがあるのかもしれないと感じたと言う。

日本が第1回WBCを制覇
(c) Getty Images

あと一歩で優勝を逃したキューバ
(c) Getty Images

■初優勝のためできることはすべてやる

初めてアメリカ代表入りしたアレナドは、初優勝を目指す同国のキーマンに挙げられている。豪華メンバーをそろえた今回のアメリカ代表に自信を見せ、「この大会は僕にとって特別なものだから楽しみたい」と語った。

ロッキーズが所属するナショナル・リーグ西地区にはロサンゼルス・ドジャース、サンフランシスコ・ジャイアンツもいる。普段のシーズンでは敵として対戦するジャイアンツのブランドン・クロフォードや、バスター・ポージーと同じチームでプレーするのもアレナドは楽しみだと話す。

「彼らはジャイアンツの選手だ。そして僕はロッキーズにいる。依然として僕はジャイアンツのことが好きじゃないけど、いまは彼らもブラザーさ。2017ワールド・ベースボール・クラシックにようこそ」

バスター・ポージーと共闘
(c) Getty Images

プロ野球選手は所属チームでのプレーに対して億単位の年俸をもらっている。いくら代表でプレーすることが誇りだと言っても、いざという場面ではケガを恐れて躊躇してしまうことも考えられる。それを責めることなどできない。

だが、アレナドは本気でアメリカの初優勝を目指し、あらゆることをやっていきたいと意気込んだ。

「僕は真剣に優勝を目指している。チームメートも同じ気持ちだ。野球は我々の国民的な娯楽だ。そしてアメリカはまだこのトーナメントで優勝したことがない。それは変えなければならない。そのために僕たちはできることすべてをやっていくよ」
《岩藤健》

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