【THE INSIDE】高校野球探訪(1)ボクたちだけの特別な夏へ「坂戸西・安田学園」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】高校野球探訪(1)ボクたちだけの特別な夏へ「坂戸西・安田学園」

オピニオン コラム
安田学園ナイン
  • 安田学園ナイン
  • 安田学園対坂戸西
  • ノックする安田学園・森泉監督
  • トルネードの安田学園・木村君
  • ノックする野中監督
  • 坂戸西の各種運動部の横断幕
  • 坂戸西グラウンド
  • 坂戸西ベンチ
夏本番まで、あと1カ月半…。高校野球は全国各地で甲子園を目指す戦いがいよいよ本格化していく。

ここから7月の地区大会までの間に、とにかく自分たちのやれることを徹底してやっていこうという気持ちで追い込んでいく。そして週末には貪欲に練習試合を組んでいきながら、チームの状況を何度も確認していく。

■夏の甲子園を目指して

この状況で何ができるのか、あるいは何がいけなかったのか。一つひとつのシーンの中で成功と失敗を繰り返し、それをまた掘り下げながら見つめ直していく。その繰り返しでチームは整備されていく。

もちろん高校野球は“学校”という限られた条件があり、部活動の一環としての取り組みである。だから高校野球をやっている誰もがすべて、自分たちの思うように野球をできるわけではない。むしろ、自分の想いとは異なる中で取り組んでいることも多い。


安田学園と坂戸西の試合

強豪校と呼ばれるところでは専用球場にナイター照明があり、夜遅くまで徹底して野球と対峙し、終わればグラウンド脇の寮に向かうという環境が整っている。その一方で、下校時刻が厳しく定められているため練習時間に制限がある学校もある。グラウンドのない学校もあれば、チームの形を作り上げるだけで精いっぱいの学校も少なくない。

各学校が、それぞれの条件のもと大会に挑むところに高校野球の面白さがある。見守る人々はそうした背景も承知で応援していくのである。そこが日本のスポーツ文化に高校野球が定着してきた最大の要因ではないか。

■練習試合は情報交換の場

2013年のセンバツ大会で、学校創立以来となる初めての甲子園出場を果たした東京の安田学園。校舎は墨田区で、両国国技館のすぐそばにある。都心だから野球部のグラウンドは学校に隣接していない。グラウンドは千葉県の野田線・新鎌ケ谷駅からクルマで10分ほどの場所だ。巨人の阿部慎之助捕手の母校としても知られる。

埼玉の坂戸西は、阪神の伊藤和雄投手や現在は中日のスカウトを務めている佐藤充氏などを輩出。男子バレーボールの強豪でもあり、日本代表の米山裕太(東レ アローズ)も卒業生だ。スポーツ環境のある公立校で体育祭が盛り上がり、「日本一の体育祭を目指す」と自負するほどに入場行進に気持ちを込めているという。

こうした理念のもとにあるためか、グラウンドにも恵まれている。坂戸西の野中祐之監督は、「相手校や、状況によって外野のフェンスを動かしているんです」というくらいだ。坂戸西と安田学園の両校は毎年、5月の最終週あたりに練習試合を組んでいる。研究熱心な野中監督は、安田学園の森泉弘監督に質問を浴びせていく。


坂戸西の野中監督

森泉監督はかつて明治大と社会人野球の明治生命で4番打者として活躍してきたスラッガーだ。都市対抗野球で旋風を巻き起こした明治生命がベスト4に進出した原動力でもあった。それだけに野中監督は毎年のように尋ねたいことが山ほどあるという。


ノックする安田学園・森泉監督

指導者たちの情報交換と、相手校から客観的に見た印象などを聞くことによって、今の自分たちのチームで見えなかったことが見えてくる。さまざまな学校と練習試合を組んでいく意味は、そんなところにもあるようだ。






結果的には2試合とも失策絡みで打ち負けた坂戸西。野中監督は、「一回、崩壊させていかないとダメですね。ミスが連鎖するし、止め切れなくなってしまう」と反省点を挙げた。

安田学園は第1試合は攪上君、第2試合は森君と、現状では投手陣の主体と考えているふたりを先発させた。2年生の森君は先日まで修学旅行で万全ではなかったが、「昨日ならしで3イニングだけ投げて、今日は少し長めに行った。投げ込んでいって4回以降の方がよくなってきましたね」と野中監督。ベストではないものの、何とか責任の回数を投げて試合をまとめたことは評価していた。攪上君も失策絡みの失点はあったが、独特のクセ球はかなり有効だなという印象だった。

春季大会は一次ブロック予選で日体大荏原に競り負けただけに、チャレンジャー精神の無の状態で夏に挑んでいきたい安田学園。2013年の甲子園出場を見て入学してきた選手たちは、男子校から共学校になってからの1期生でもある。この夏、どんな戦いをしていくのか興味深いところだ。
《手束仁》

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