■新入生たちも加わる春季大会
翌春のセンバツ出場に影響がある秋季大会や、最後の目標である夏の選手権とは少し異なった、どこか気持ちの余裕を感じさせてくれるのが春季大会。スタンドには新入生が少しぎこちないながらも一生懸命に声援を送っている姿があり、春季大会ならではの独特の光景だ。
この大会でチームが勝ち上がっていくことで、新入生たちにも少しずつ「自分たちのチーム」という意識が育まれていく。
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スタンドにはフレッシュな新入生の姿も
春季大会は各都道府県の高等学校野球連盟の方針に沿って行われるため、夏の選手権のように全加盟校が一斉にトーナメントで競うガチガチの一本勝負ではない。参加校(加盟校)の多い都府県では各ブロックでの一次予選を開催して、そこから勝ち上がった学校で県(都・府)大会を戦うシステムのところも少なくない。つまり、それが最初の目標となる。
さらに、都府県大会を勝ち上がっていけば、次のステージとして東北地区大会、関東地区大会、東海地区大会、近畿地区大会、北信越地区大会といった各地区大会への進出となる。ここで他府県の学校と対戦することになるが、この成績が直接甲子園出場に影響するものではない。
それだけに大会出場はひとつの目標とはしているものの、必ずしも絶対に目指していかなくてはならないという位置づけでもない。それよりも、夏へ向けてさまざまなことをトライしたいという考えの指揮官も多い。
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サヨナラ勝ちをして歓喜の輪を作った東大和ナイン
■選手たちの刺激に
投手に関しては、公式戦で試してみたい選手を起用するのには絶好の機会だ。夏を見据えた場合には、どうしても投手がひとりだけでは戦いきれないのが現在の高校野球である。春季大会で好投していくことで、チームとしても新たな投手の軸を見つけていくこともできるし、選手自身も自信をもって大きく成長することがある。
また、控えだった選手が起用されて活躍することで、それまで正選手で安泰だと思っていた選手にとって刺激になることもあるだろう。最後の夏の大会へ向けて「このままじゃいけない」という思いになって、もっと頑張るという意識を持たせるカンフル剤にもなる。
多くの都道府県では、この大会が夏の選手権に向けてのシード権を決める大会でもある。だから、シード権が確定するベスト8やベスト16を第一目標として、次が地区大会への出場権、そして優勝という目標設定をするところがほとんどだ。
高校生にとって、公式戦として他県の学校と対戦することは大きな刺激になる。それに練習試合とは異なった緊張感を味わうことで、選手たちの意識も変わってくる。甲子園常連校はともかく、当面のシード権獲得などを目標としている学校にとっては、大きな舞台で戦うことで選手たちの成長を期待することも多い。
ある高校野球部の監督は、「公式戦という形で戦える緊張感は特別です。応援団も来てくれると、より意識は違ってきます」と春季大会についてを語ってくれた。
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二桁番号の選手が活躍して自信を得ていくことも多い
春季大会後はそれぞれが夏へ向けてもう一度チームを作り直していく。地区大会などの経験値を積んでいくことは、間違いなくチームの糧となるはずだ。そして試合を続けることで、チームの新たな課題などに気づくこともあるだろう。夏へ向けて修正するテーマを見つけるのも春季大会だ。
球場の都合などもあって、東京都などはすでに大会が終了してしまっているが、多くのチームはこれからの連休がピークとなっていく。それぞれのチーム事情や、指揮官の思惑を察しながら、どんな戦いをしていくのかと想像することも、春季大会の楽しみと言えようか。