都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第5回【泰然の指揮官】 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第5回【泰然の指揮官】

オピニオン コラム
都立三鷹高校サッカー部、最後の選手権…連載第5回【泰然の指揮官】
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開幕が明日12月30日に迫った第93回全国高校サッカー選手権大会。その開幕戦は、東福岡高等学校(福岡)と、7年ぶり2回目出場の東京都立三鷹高等学校(東京B)。

一回戦で優勝候補筆頭の東福岡と当たることになった三鷹高校。選手や監督たちはどう感じているのだろうか。

試合のカギを握る選手たちへインタビューを実施してきた。連載の最後は、彼らを率いてきた佐々木雅規(ささきまさのり)監督。主将の巽選手に「佐々木監督でなければ全国に行けなかったと思う」と言わしめた佐々木監督の哲学を紐解く。

◆「上手くなるより強くなる」練習をしている

---:三鷹に来て3年目、(1年目は中等学校で、高校は2年目)高校のサッカー部を監督するのは2年目という短い期間で、全国大会出場を成し遂げるということは簡単な道のりではなかったはずです。まず、三鷹に転任してきて、チームに抱いた感想というのはどういったものでしたか。



佐々木雅規監督(以下、敬称略):7年前に全国大会に出ているから、その強さというか、伝統というか、そういう「全国に出たことがあるチーム」というプライドをもっているチームだと思いました。「上手くなる」というよりも「強くなる」練習をやっているな、という印象を受けましたね。

---:どういったところに「強くなる」という印象を持ったのでしょうか。

佐々木:ひとつひとつの練習に関して意識を高くもっているという感じです。足先だけではなく、「気持ちを込めている」のが伝わってきたというか。

三鷹の良さというのは「徹底できるところ」。チームコンセプトで「こうやっていこう」となったらそれを徹底してやっていけるチームです。その良さが、今回の選手権に生きているような気がしますね。

自分たちで「こうやってやっていこう」と決めたことがあると、それを「自分たちで決めたのだから徹底しよう」と一丸となって最後まで徹底できる。話し合ったことを、徹底できる。それができるというのは本当に強いことだと思いますよ。

◆コンセプトを徹底できる三鷹らしさを土台に、選手を「見る」

---:「強くなる」練習や意識があるチームの性質を土台に、どういったチームをつくっていきたいと思われたのでしょう。指導に際して意識してきたことはありましたか。

佐々木:…なかったよね(笑)。

佐々木:過去、三鷹高校サッカー部を率いてきた山下、香取といった名指導者のもとでやってきた三鷹サッカー部を前に、どんなチームにしていこうかなんて、考えられないよ、ねぇ(笑)。

でも、そうですね、「見ること」ですね。選手ひとりひとりをしっかり見て、「この選手をこういうところで使ったらどういう風に動くのだろうか」ということを常に考える。

そういったことを特に意識するようになったのは、インターハイ予選からなのです。

完璧な勝ち試合だったのに、ベンチミスで負けてしまった。やっぱり、その時は「見えて」いなかったんです。「どこか痛めているのか?」「どういう走り方の選手なのか?」「バテてしまっているのか?」そういったことも分からなくて。

そこから、選手そのものをしっかり「見る」ということを意識していくようになりました。

◆イマジネーションを働かせるサポート

---:多くの選手も話してくれましたが、選手に任せていくスタイルが脈々と受け継がれていたと。

佐々木:「任せる」というわけではなくて、約束事があるんです。サッカーは形っていうものがないので、どんどん膨らんでいく、自分たちのアイデアを出していく、話し合って…。

「任せる」というのもないことはないのですが、それよりももっと、「自分たちでアイデアを出す」ことをサポートする側にまわった方が、もっと面白いサッカーができるだろうという考え方に基づいています。

特に攻め。DFの方は、意識しないとなかなかうまくまわらない部分もあるので色々と指示することがある。一方攻めは、色々なアイデアやイマジネーションを働かせてやらないと。「自分はこういう風に考えている、こういう風に動くからこうしてくれ」といった、意思の噛み合わせが必要です。

◆都立が勝ち進むための工夫

---:私立に比べて練習時間の制限、環境の違いというのはあったと思うのですが、そういった点はどうカバーしてきましたか。

佐々木:定時制があり、中等生は17時まで、そこで中等生は帰らせて高校生は18時30分まで。一時間半ほどの短い時間しか練習ができない分、いかに集中して練習をするか。それには、空いている時間で自分たちで工夫してトレーニングをする、というところが求められます。

また、1年生は全員6km走るという伝統があります。走ってから、朝練に参加。そういうところにも強さがあるのかなと。

---:技術を、走力や精神力でカバーするためですか。

佐々木:まぁ、最初のころは「人数が多いから外で走っとけ」みたいな感じだったのかもしれません。でも、1年生はそういうことをやるというのが定着してきて、続いて、それが次第に今の時代もあたりまえの習慣となってきたということなんでしょうね。

ただ、その走ることも「手を抜かない」。それはすごいこと。

対戦相手の先生から、「あの必死で歯を食いしばって走る三鷹の選手を見ていたら、絶対にうちは勝てないと思いました」という言葉を頂いたこともあります。これも、三鷹の強さである「徹底できること」なのかなと。

---:三鷹が他校に誇れることは何ですか。

佐々木:うーん…。他校を見て、勉強させてもらうことは沢山あるんだけどね。

(30秒ほど考えて)

…なんだろうね。いや、思いつくことはいくつかあるのですが当たり前のことばかりで…。聞きたいくらいですよ(笑)。

聞いて「そうか、そういうところが三鷹の誇れるところなのか。」という感じですね(笑)。



◆ありんこ軍団、全員で戦う

---:東福岡という相手と対戦することになり、感じていることは。

佐々木:こっちは向こうの情報を入れていないというか、見ていなくて、いまのところは他の人からの情報しか持っていないのですが、みんな「今年の東福岡は本当に強い」って口を揃えて言っています。

先日、東京のサッカー仲間の激励会があって、そこでも「見事、花と散ってください」なんて言われちゃったりしているので…(笑)。

こういったことを逆に言うとノープレッシャーというか。その意味でアドバンテージがあるのかな、とも考えられます。

「ありんこ軍団になって象を倒していこう、一人じゃかなわないから全員で戦っていこう。」と選手には言っています。

そういった戦い方をして、後半の15分くらいまで0点で抑えていって、20分経って、30分経って…。というスコアがずっと続いていったら、駒沢(初戦の会場)はどよめくだろうな、と。そういう雰囲気を楽しむことができたらいいですね。

---:やはり、楽しみですか。

佐々木:相手がどういうチームかまだ知らないのですが、生で見るほうがずっと迫力がありますので、相手を見るのも楽しみです。

また、本当に選手権は予選からずっとドラマの連続だったので、ここにきて最高の舞台が待っていたなという感じです。そういう舞台で戦えるというのはもう、これからないと思うので本当に楽しみですね。

***

日本サッカー協会は2014年12月28日、東京・駒沢陸上競技場で同月30日に開幕する全国高校選手権の開会式と開幕戦の入場券が完売したと発表した。

都立である三鷹高校のホームグラウンドとなることが予想される。会場の雰囲気を、自分たちのものにできるか。

都立三鷹高校としての最後の選手権。選手・チームが輝く、試合開始のホイッスルがまもなく吹かれる。

(おわり)
《大日方航》

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