炭素ドグマの真価とは ピナレロ ドグマ 60.1 vol.1 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

炭素ドグマの真価とは ピナレロ ドグマ 60.1 vol.1

オピニオン インプレ
安井行生のロードバイク徹底インプレッション
安井行生プロフィール

金属至上主義は何処へ?炭素ドグマの真価とは?
1995年、インドゥラインのケラルライト。1996年、伝説のパリ。1998年、名車プリンス。2002年、真打ちドグマ。そして2009年、素材こそ変われど常に金属フレームをトップグレードに据えてきたピナレロが、遂に時代と足並みを揃えた。この事実を僕らはどう捉えればいいのか。これは、あのドグマの名に相応しいバイクに仕上がっているのか。オリジナル・ドグマをほとんど神格化しつつある安井が厳しい目で判定を下す。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
「ピナレロのトップモデルがとうとうカーボンに!」 — ロードバイク2010シーズンの中で、最も大きな話題を振りまいた出来事の一つがドグマ60.1のデビューだろう。ロード界における唯一無二の存在であるマグネシウムフレーム 「ドグマ」 の名を継承してはいるものの、プリンス・カーボンの50tを上回る60tグレードのカーボンを素材とするブランニューバイクである。カーボンの弾性率は高ければ高いほどいいと思われている方も多いと思うが、カーボンは弾性率が上がると硬くなると同時に脆くなる。ガラスは非常に硬いが割れやすいのと同じ理屈だ。実際に、80tクラスになるとカーボンシートを無用心に持ち上げるだけでパリッと割れてしまうほど脆いのだという。そこでドグマは、“高弾性炭素複合素材のウィークポイントである耐衝撃性” を補うため、“東レが開発したナノスケール 「ポリマーアロイ」” を使用することで “従来ではカーボンコンポジットが破断していたような衝撃でも破壊の危険性を緩和” しているのだという。要するに超高弾性なのにパキッと割れにくいということらしい。
しかし新たにピナレロの旗艦を張ることになるこの最新カーボンフレームは、素材よりも大きなトピックを持っている。カーボンバック、インテグラルヘッド、大口径BB (ピナレロのこれはちょっと時期尚早だったか) 等々、後に世界中の自転車メーカーがあわてて追従することとなる数々のトレンドの発信者が放った次の一手、それが 「完全左右非対称設計」 である。
自転車という乗り物はドライブトレインが車体右側にあるためフレームにかかる応力が左右で異なる、ということは随分前から言われている。右クランクを踏み込んだとき、ハンガーは左に動き、さらにチェーンの張力によってハンガー右側が後方へと引っ張られる。同時に右チェーンステーは圧縮の力を受ける。左クランクを踏んだときはハンガーが右に動くが、チェーンの駆動力が働くことに変わりはなく、同じようにハンガー右側は後方へ引っ張られ、右チェーンステーは圧縮力を受ける。この左右差により、ピナレロが言うには “左右対称フレームに1500Wの力が加わったとき、同じ力でも左ペダルはBBを右へ1〜2mm動かそうと作用し、右ペダルはBBを左へ2〜3mm動かそうと作用” するらしい。ドグマ60.1のフレームは右ステーを強化することで左右差を補正し、ペダリングパワーをよりニュートラルに推進力へと変換することに成功しているのだという。
必要か否かは別にして、確かにこれは理にかなっているように思える。少々理解に苦しむのはフロントフォークである。フォークまでアシンメトリーにする必要はあったのだろうか?ドグマ60.1のフォークブレードは左右で結構なボリュームの違いがあるが、フォークにかかる応力は左右対称ではないのか?それについて、メーカー担当者に聞いてみた。
「ドグマ60.1の開発では、単純にフレーム単体に荷重をかけて解析するのではなく、完成車としてライディングしている状態でシミュレートしています。そうすることで、ペダルからの入力だけでなくハンドル、サドル、チェーンからスプロケに掛かる駆動力、路面から受ける反動入力などあらゆる方向からの荷重のかかり方を分析できるのです。結果、ペダリング入力に対して左右で異なるたわみが現れ、それに対してハンドルから入力される力によるフレームやフォークのたわみも左右均等にはならないことが分かりました。それを補正するためにはフォークを含めたフレーム全体のデザインを見直す必要があったんです」
なるほど。しかし、「左右の旋回性能・ハンドリング特性に差が出る」 という可能性はゼロだったのだろうか?疑問は残るが走れば分かる。とにかく、「完全左右非対称設計」 というキーワードによってライバルとの差別化をより一層明確なものとし、ドグマ60.1は、いまや世の中にゴマンといるピナレロファンをまた熱狂させるのだろう。そのキーワードがコスメティックな意味合いを持たないとは僕は言い切れないが、「新しいものを生み出そうとする意思とその力」 が今一番強いのは、確かにピナレロである。

スペック

車名、構造、ルックス、存在、どう捉えるか?
グロテスクになるギリギリ一歩手前
ドグマ60.1の塗料には、ギョッとするほど派手なラメが混ぜてあった。そのグニャグニャとしたフォルムとも相まって、グロテスクになるギリギリ一歩手前で 「カッコイイ」 の範疇に踏みとどまっている、という印象。ブランド力のないウチで作ったらゲテモノ扱い間違いなしだが、サイクルモード2009で最も注目を集めていたのは、恐らくこいつである。
スペックマニアが大喜びしそうなこの 「左右非対称フレーム」 という概念は、しかし実は新しいものでも斬新なものでもない。クロモリ時代からチェーンステーに左右非対称の潰しを入れたフレームは多かったし、カーボンフレームで言えばTIMEは随分と前から非対称チェーンステーを取り入れている。有力メーカーのトップクラスでは左右対称ステーモデルの方が少ないかもしれない。そもそもロードフレームは本来、構造的に左右非対称なのである (ドライブトレインが右にあることに加え、リヤホイールにオチョコがあるから)。だからドグマのカタログがうたう 「The First Asymmetric Racing Bike of the World」 のキャッチコピーに違和感を覚えるのは当然だ。とはいえ、ここまで全身非対称に徹底しているのはドグマが初めてであることは確かな事実である。
車名の 「DOGMA」 はどうだろうか。自社の過去の名車のバッジを埃を払って引っ張り出してきて新型車に張り付け、過去の名車と新型車との間に関連性を持たせることで完全に新しい車名より優れたイメージを植え付ける、というのは自動車業界ではよく使われるブランド戦略であり、自転車メーカーのピナレロにも 「Paris」、「Prince」 という前例がある。今回の場合、唯一とも言える高級マグネシウムフレームの車名をあらかじめ刷り込んでおくことで、その存在に先進性と独自性というイメージを持たせようとしたのだろう。驚きはしなかったし、正直イージーなネーミングだと思ったが、その存在感とオーラで有無を言わさず納得させてしまうのはさすがといえる。これを目の前にしたら、その車名に誰も文句など言わない。
高速域にピントが合わせられたレーシングバイク
派手さに少々気後れしながらラメ塗装に跨って走りだしてみるが、「左右非対称形状によりフレームバランスが劇的に向上!」 なんていう夢みたいなことは、残念ながら実際には起こらない。特に違和感も覚えなかったため、体感には至らないレベルで効果が出ているのかもしれないが。そもそも、僕らは今までの 「(ほぼ)左右対称」 フレームに全くなんの違和感もなく乗っていたのだから、もしドグマが左右非対称になってフレームバランスが完璧に改善されたのならば、そこに僕らは 「間違った」 違和感を覚えるはずである。
しかし、これだけ左右で形状の異なるフレームを何も考えずに漫然と作ったとしたら、真っ直ぐ走ることすらできない欠陥バイクが出来上がるだろう。左右2本に分かれている全てのパイプ (フォーク、チェーンステー、シートステー) の形状にこれだけの左右差があるのだから、ダンシングやコーナリングでどこへすっ飛んでいくか分かったものではない。しかし実際には矢のように真っ直ぐ走ってのけるどころか左右のハンドリング特性の差など微塵も感じさせないため、CADやFEMによる解析の効果はしっかり出ていると言える。
結果から言うと、競技用自転車としての実力はあきれるほど高く、動的性能は期待通りの現状最高レベルにある。硬いか柔らかいかで言えば、滅法硬い。試乗車のフレームサイズ (465SL) と筆者の体重 (52kg) との組み合わせでは、有り余る剛性を持っている。
その走りは古典的でガチッと硬い。30km/h以下では重ったるさを感じるミッチリと詰まった高剛性。どんなに踏んでも強靭無比な芯。すさまじい質実剛健感。ヒルクライムでも、ヒラヒラパキパキとした軽快感があるタイプではない。全ての動作が重厚で力づく。乗りこなすにはかなりの筋力が必要だろう。ただ、鞭を入れれば、目の覚めるような鮮やかで激しい加速に襲われる。体調のいいときなら、いつでもレースOK!という気分になる。
ドグマ60.1もまた、高出力域・高速域のみにピントを合わせて作られた純粋なレーシングバイクであり、低速ではドテッとしているが高速域になるとそのフレーム特性が活きてくる、というプリンス・カーボンやFP7に共通したライディングフィールの持ち主だった。
例えばピナレロトップレンジ3車でブラインドテストをしたとする。おそらく10人に8人はドグマ60.1とプリンス・カーボンとの違いを言い当てることができないだろうし、6人くらいはもしかするとFP7との差にすら気付かないかもしれない。今のピナレロのレーシングバイクはそれほど全て完成度が高く、似通ったフィーリングを持っている。マグネシウムのドグマはまた棲む世界が全く違う。比較対象にはなり得ない。
《編集部》
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