ドグマ60.1の塗料には、ギョッとするほど派手なラメが混ぜてあった。そのグニャグニャとしたフォルムとも相まって、グロテスクになるギリギリ一歩手前で 「カッコイイ」 の範疇に踏みとどまっている、という印象。ブランド力のないウチで作ったらゲテモノ扱い間違いなしだが、サイクルモード2009で最も注目を集めていたのは、恐らくこいつである。 スペックマニアが大喜びしそうなこの 「左右非対称フレーム」 という概念は、しかし実は新しいものでも斬新なものでもない。クロモリ時代からチェーンステーに左右非対称の潰しを入れたフレームは多かったし、カーボンフレームで言えばTIMEは随分と前から非対称チェーンステーを取り入れている。有力メーカーのトップクラスでは左右対称ステーモデルの方が少ないかもしれない。そもそもロードフレームは本来、構造的に左右非対称なのである (ドライブトレインが右にあることに加え、リヤホイールにオチョコがあるから)。だからドグマのカタログがうたう 「The First Asymmetric Racing Bike of the World」 のキャッチコピーに違和感を覚えるのは当然だ。とはいえ、ここまで全身非対称に徹底しているのはドグマが初めてであることは確かな事実である。 車名の 「DOGMA」 はどうだろうか。自社の過去の名車のバッジを埃を払って引っ張り出してきて新型車に張り付け、過去の名車と新型車との間に関連性を持たせることで完全に新しい車名より優れたイメージを植え付ける、というのは自動車業界ではよく使われるブランド戦略であり、自転車メーカーのピナレロにも 「Paris」、「Prince」 という前例がある。今回の場合、唯一とも言える高級マグネシウムフレームの車名をあらかじめ刷り込んでおくことで、その存在に先進性と独自性というイメージを持たせようとしたのだろう。驚きはしなかったし、正直イージーなネーミングだと思ったが、その存在感とオーラで有無を言わさず納得させてしまうのはさすがといえる。これを目の前にしたら、その車名に誰も文句など言わない。