チーム結成時に右京さんは「5年でツール・ド・フランス出場」を掲げていて、その約束の年となったのだが、「もう少し待って下さい」と率直な胸の内を語った。
■ツール・ド・フランスに日本チームを出場させたい
「あきらめなければF1にだって乗れる。だから夢をつかむために頑張ることが大事。そうすればいつかはツール・ド・フランスにだって出られる」
5年前、電撃的に自転車チームを結成させた右京さんがコメントしたこの言葉が心に刻みついている。
「ツール・ド・フランスに日本チームとして出場するなんて、いくら片山右京だって無理だろう」という声があちこちで聞かれた。そして5年目で出場するという目標は実現できなかったのだから、笑いものになったとしてもいいわけはできない。
しかし4年間のステップアップは目を見張るものがあったはずだ。過去3年間は国内シリーズ戦Jプロツアーで総合チャンピオンを輩出してきた。スペイン勢を中心とした海外勢の活躍があったとしても、2015年の全日本選手権では窪木一茂(現NIPPO・ヴィーニファンティーニ)が優勝し、畑中勇介も2位になった。いわゆる圧勝である。
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片山右京
F1のみならずツール・ド・フランス主催者が運営するダカールラリーにも出場している右京さんだけに、運営やPR手腕は的確で、国内自転車界に多くのインパクトを与え続けてきたことは言うまでもない。
果てなき夢を追い続ける。目指すは日本チームとしてのツール・ド・フランス初出場。海外5・国内6選手からなる11人体制の2016シーズンは、キャプテンだった土井雪広(現マトリックス・パワータグ)と日本チャンピオンの窪木が抜けたが、新キャプテンとなった畑中勇介は2015年のJプロツアー年間王者だ。
平井栄一、住吉宏太が中堅となり、若手3選手が新加入。U23全日本チャンピオンの中井路雅とその弟・唯晶はともに京都産業大の学生。さらに高校時代に注目された今井勇太が大学進学せずにプロとしての道を選んでチーム入りした。
■スペイン選手から刺激を受ける
海外勢はすべてスペイン選手で、山岳スペシャリストからオールラウンダー、スプリンターとあらゆる走りのタイプがそろえられた。このスペイン勢と畑中をAチームとして、レースに応じて若手を投入する。「若手が刺激を受けて化学変化を起こすことがねらい」と右京さんはもくろむ。
「若者を育てる。日本を強くするには思ったよりお金と時間がかかりますね。簡単じゃないけど、なんとかやりとげたい」と右京さんは、エールを送ったボクのFacebookにコメントを書き込んでくれた。
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モータースポーツやサーフィン選手を加えたチーム右京ファミリー
2020年の東京オリンピックが終わったら、自転車への関心もスポンサーも一気に引いていくことを右京さん自身は想定している。オリンピック後にロードバイクが文化として日本に定着しているか。日本の自転車界は試されているような気がしてならないという。
「自転車の可能性、ポテンシャルは高いと思いますが、ボクたちが日本やこの未来において必要とされるかどうかはこれから分かります。歴史を作るなんておこがましいことは言えないけど、ツール・ド・フランス出場という大きな目標に向かってがむしゃらに突っ走ってみる」
チーム2年目となる畑中は「出るレースに全部勝てと右京監督に厳命されている」と証言。2015年は4勝した。
「国内ではチャンピオンとして、海外ではその先の大きな目標を見すえながら堂々とした走りをしていきたい」