【山口和幸の茶輪記】箱根駅伝、青学V2の陰に卒業生・学生渾然一体の支援態勢 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】箱根駅伝、青学V2の陰に卒業生・学生渾然一体の支援態勢

オピニオン コラム
【山口和幸の茶輪記】箱根駅伝、青学V2の陰に卒業生・学生渾然一体の支援態勢
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1月2日・3日に行われた箱根駅伝こと第92回東京箱根間往復大学駅伝競走で、青山学院大が1区から一度もトップを譲ることのない完全優勝。二連覇を達成した。原晋監督の手腕や各選手の強さは専門メディアが既報しているので、ここでは陰の支援態勢に着目してみた。

■快進撃の始まりは2009年

2009年、じつに33年ぶりに箱根駅伝出場を果たした青山学院大は、最下位となる22位ながら全員が満面の笑顔でゴールを迎えた。ここから快進撃が一度も途絶えることなく始まった。

2010年に8位となり待望のシード権を獲得。このときからシード権を失ったことはなく、高校駅伝で活躍した全国の有力選手が次第に青学に進学することを希望するようになっていく。当時の陸上競技部(長距離ブロック)は推薦入学枠がなかったため、すべての学生が一般入試を突破して入学してきた。これまで同大体育会のホープだった硬式野球部が東都大学リーグで二部降格する時期と重なっている。

2011年は9位、2012年に大学初の5位入賞。さらに8位、5位と続き、2015年に悲願の初優勝を決めた。5区の箱根路で神野大地くんが、ツール・ド・フランスのアルプスを山岳スペシャリストが駆け上るような勢いで一気に首位に躍進し、それをはずみにした初勝利だった。しかし二連覇となった2016年はそれとはまた異なる、そして異次元の強さを見せつけた。


コース沿いに並ぶ青山学院大の幟旗

幼稚園から大学まで備える青山学院は、すべての卒業生を対象とした青山学院校友会という組織がある。校友間の親睦を深め、母校の発展に寄与することを目的にし、33万人の会員数を誇っている。

そのなかでも東京・大手町から神奈川・箱根芦ノ湖までのコース上となる各支部が中心となって、沿道の29カ所に応援拠点を設置。さらに沿道企業などがサポート役を買って出て、3区だけでも急きょ2カ所に拠点を増やしたこともあり、その数はさらに多かったはずで、復路を加えれば倍になる。

33年という箱根駅伝不在の時代も、校友会は箱根駅伝で母校の選手がタスキをつなぐことを夢見て支援してきた。2008年の予選会では、タイムでは上回ったが他大会の成績を加えたポイントで逆転されて落選し、涙を飲んだ。そのときから全学一体となってサポート役に回ることの重要性を認識し、全力で支援する方針を固める。

■校友会を中心とした支援態勢

箱根駅伝の常連となってからは校友会が幟旗と手旗を用意し、各支部の役員をアテンド役として配置。初優勝の期待がかかった2015年からは大学に通う青学生がそれに加わった。

1年目は初めての支援だけに両者ともに「なにをしたらいいのやら」と言った感があったが、その反省点をあらい出し、計画を刷り直して2年目には卒業生・現役渾然一体の支援態勢を整備した。学生課も各所に足を運ぶ現役生をリスト化し、大会までに校友会の拠点責任者と連絡を取り合ってそれぞれがなにをすべきかを確認し合った。


青山学院の卒業生と学生らが一緒に応援する

今回の連覇により、大学・現役の学生・卒業生が連携してサポートしたことで強さのレベルを高めたことが証明されたと言っても過言ではない。事実、見事な走りを見せた10人の選手は「フレッシュグリーンの幟旗を見たり、そして途切れることなく声援を送られたことがパワーになった」と口々に語っている。

五輪でメダルを取るとその周囲を含めて大きな変化が見られると言うが、箱根駅伝総合優勝もそれなりの影響力がある。その総数は学校の卒業生という大枠で見れば五輪メダリストをはるかに上回るもので、母校の大活躍にハッピーになれた人たちが全国に相当数存在する。

ちょうど1年前の当コラムでも書いたが、部員たちの地域に根づいたライフスタイルも強さの秘けつだ。

【山口和幸の茶輪記】ツール・ド・フランスと箱根駅伝。沿道にいるとレース展開がまったく分からない!

神奈川県相模原市にある淵野辺キャンパス周辺で練習する部員たちは、ここで原監督夫婦とともに寮生活を送っている。グラウンドや付近で走り込みを続ける部員たちは地元の人にとって見慣れた光景で、箱根駅伝両日には相模原市や隣接する東京都町田市から「いつも頑張っている陸上部員を応援しに来た」という人たちがコース最寄りの3区・8区に集結した。卒業生でなくとも「箱根駅伝では青学がスキ」という人が多いのである。

ちょっとチャラくて楽しそう。そのイメージにビビッときた世界的スポーツメーカー、アディダスも陸上長距離部を全面的に支援している。明るい学園カラーが高視聴率で全国に長時間にわたってメッセージを送り続けた。おそらく「青学で箱根を走りたい」という高校生ランナーは急増し、一般入試の受験者数も倍増する。青山学院大のしたたかな戦略でもある。
《山口和幸》

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