ヨーロッパ組のみを集めて、5月下旬に千葉県内で行われた短期キャンプ。リハビリでいいから一緒にやらないかと、ハリルホジッチ監督から声をかけられ、参加した内田はこんな言葉を残している。
「自分のなかでは(ワールドカップ・ブラジル大会を)休むつもりはなかったですし、こうなるっていうのはある程度、覚悟してやってきた。変な話、あのときに休んでおけばという気持ちはまったくありません」
◆普通の人間の体からアスリートの体へ
すべてを運命として受け入れ、前へ進むためのパワーに変える。シャイであることを自任し、公の場で決意や覚悟を明かすのをはばかる内田は、実は誰よりもサムライの心を奥底に秘めている。
アントラーズのファーストステージ制覇を見届けた直後のこと。無邪気に笑いながら「僕も早くグラウンドでやらないと、という気持ちになるよね」と語った内田は、こうつけ加えてもいる。
「やっぱり普通の人間の体からアスリートの体へ戻すというか、1年半も休んでから急に1ヶ月、2ヶ月の練習をポンとやると、またちょっと違う感じもあると思うので」
シャルケで練習を開始してから1ヶ月あまり。反動が出てくることを内田は覚悟していたし、完全復活のためには避けて通れない痛みだと、努めてポジティブにとらえて帰国したのかもしれない。
シャルケ側の説明によれば、日本での滞在期間は2週間ほど。おそらく今回も香取氏の診察および治療を受けて、必要とあれば今後のトレーニングメニューの内容なども再検討するのだろう。
リハビリにブランクが生じた関係で、もしかするとブンデスリーガ前半戦での復帰は難しくなるかもしれない。それでも右ひざの痛みを完ぺきに取り除き、そのうえで再発を防ぐための筋肉の鎧をまとい、試合勘も取り戻した先に待つ不死鳥のごときストーリーを信じて、内田は前へ進み続ける。
《藤江直人》
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