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【THE REAL】宇佐美貴史と昌子源…ナビスコカップ決勝の大舞台でまじわる、宿命に導かれた直接対決

オピニオン コラム
宇佐美貴史(左)と昌子源
  • 宇佐美貴史(左)と昌子源
  • 宇佐美貴史 参考画像(2015年3月31日)
  • 昌子源 参考画像(2015年3月31日)
  • 昌子源 参考画像(2015年3月31日)
  • 昌子源 参考画像(2015年5月5日)
  • 宇佐美貴史 参考画像(2015年3月31日)
  • 宇佐美貴史 参考画像(2015年5月6日)
  • 宇佐美貴史 参考画像(2015年10月13日)
「日本へ戻るのならば、ガンバしか考えていなかった」

ガンバ愛を貫きながらJ2のピッチから捲土重来を期し、2013年シーズンの後半戦だけで出場試合数を上回る19ゴールをマーク。復帰したJ1の舞台でも、その攻撃センスは異彩を放っていた。

果たして、初めての直接対決は宇佐美に軍配が上がる。ガンバは重量級フォワードのパトリックに、徹底して昌子の背後を狙わせる。後半26分のパトリックの同点弾をアシストしたのは宇佐美だった。

後半アディショナルタイムの劇的なゴールでの逆転勝利に狂喜乱舞したガンバおよび宇佐美とは対照的に、昌子はこの試合で右太ももを負傷。ハビエル・アギーレ前監督のもとで初めて招集された、日本代表を辞退する無念さも味わわされている。

「自分のポジションを探しながら、代表にも入っていけるようになったのはすごいこと」


昌子源

招集待望論がわきあがりながらアギーレジャパンから声がかからなかった宇佐美は、昌子へ敬意を表しながら、アントラーズ戦前には対抗心を隠さなかった。

「試合では(源を)100%抜いたるわ」

順調にケガから回復した昌子は11月の国際親善試合、そして年明けの1月にオーストラリアで開催されたアジアカップでも日本代表の一員として名前を連ね続ける。

■プラチナ世代のふたり

3月に発足したハリルジャパンにも招集され、念願の初キャップを獲得した3月31日のウズベキスタン代表との国際親善試合。味の素スタジアムのピッチで、日本代表デビューを果たして2戦目の宇佐美の背中に昌子はデジャブを覚える。

後半38分。途中出場していた宇佐美がこぼれ球を拾い、ドリブルの体勢に入った瞬間に、後方のセンターバックの位置から戦況を見つめていた昌子はゴールを確信している。

「ドリブルを見ただけで、決まったと思いました。ゴールがほしいときに取ってくれる。相変わらず天才やと思いましたよね。味方になると、こうも頼もしいんだなと」

ゴール前の密集地帯を強引かつ鮮やかにすり抜け、渾身の思いを込めて振り抜いた右足から放たれたスーパーゴールがネットを揺らす。真っ先に祝福へ駆けつけたのは柴崎。そして、昌子も自分のゴールように笑顔を弾ませていた。

宇佐美と昌子が生まれた1992年は「プラチナ世代」と呼ばれる。このとき、ふたりは同じ思いを共有したはずだ。

「Jでも代表でも、自分らの世代がやっていかなあかん」

過去2シーズン、まさかの無冠に終わっているアントラーズは他のJクラブの追随を許さない通算17個目のタイトル奪取を名門復活への狼煙としたいと腕をぶす。


宇佐美貴史

今年7月にはトニーニョ・セレーゾ前監督が解任される事態にも直面した。コーチから就任した石井正忠新監督のもとでいきなり6連勝を達成する。

「強い鹿島の伝統が戻ってきたのでは」

メディアからの問いかけに、昌子は首を横に振りながら決意を新たにしている。

「強い鹿島というのは僕たちの大先輩、レジェンドの方々が築いた時代。僕たちは何も成し得ていないし、言うたら強い鹿島を壊してしまったのは僕たちとなる。常勝軍団とも呼ばれなくってきていますし、せっかく先輩方が築いてくれた鹿島という伝統あるクラブを、僕たちが復活させなければ意味がない」

実は9月12日のセカンドステージ第10節でアントラーズの7連勝を阻止したのがガンバであり、前半29分、39分と連続ゴールを叩き込んだ宇佐美だった。

ケガで欠場を余儀なくされていた昌子は「乗せたら厄介な選手。受けに回らずにいきたい」と期する思いを心中に募らせている。


宇佐美貴史

対するガンバは、ナビスコカップ制覇で右肩あがりの成長曲線と勢いをさらに加速させて、J1、そして天皇杯との三冠を独占した昨シーズンの再現を期す。

宿敵アントラーズをくだせば通算8個目のタイトルとなって歴代単独2位に浮上する。連覇は過去にヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)、ジェフ千葉、そしてアントラーズしか達成していない。

大相撲の番付けにたとえれば、東の横綱アントラーズに対抗しうる西の横綱として、サッカー専用の新スタジアムとともに臨む来シーズン以降の新時代を迎えることができる。

両チームの未来をも託された激闘必至の一発勝負。ライバルチームの攻守の主力として、そして日の丸を背負って戦っていく盟友として。覇権の行方は常に切磋琢磨する万感の思いを秘め、武者震いを覚えながらピッチの上で必ずまじわるふたりの直接対決が握っている。
《藤江直人》

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