【THE REAL】武藤嘉紀を新天地マインツでも成長させる力…国境や文化の壁を越えて愛される理由 2ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】武藤嘉紀を新天地マインツでも成長させる力…国境や文化の壁を越えて愛される理由

オピニオン コラム
武藤嘉紀 参考画像(2015年8月23日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2015年8月23日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2015年7月29日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2015年8月29日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2014年9月9日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2014年10月10日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2015年1月12日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2015年 6月11日)
  • 武藤嘉紀 参考画像(2015年7月12日)
思い出されるのは、チェルシー移籍を巡る報道が過熱していった4月から5月にかけての約2カ月間だ。FC東京での練習後や試合後に、武藤は必ずといっていいほどメディアに対応してはコメントを残してきた。

「自分が歩んでいく道なので、ゆっくりと決めたい気持ちがあります。どこにいけば成長できるのか。試合に出場してこそ成長できると思うので、これから先を考えた上で自分に合ったチームをしっかりと見すえていきたいと思います」

毎回ほぼ変わらないコメントでも、本人がしっかりと口にするのとしないのとでは、与える印象がまったく違ってくる。武藤嘉の真摯な姿勢は、映像や新聞紙上の文字を通して十分に伝わってきた。



■ターニングポイント

もっとも、舞台裏では状況は異なっていた。

ロッカールームをはじめとする、チーム関係者しか立ち入れないエリア。武藤嘉は憔悴しきった表情を浮かべながら、幾度となくこんな言葉を漏らしていたという。

「もういいよ…」

サッカー人生で迎えた最大のターニングポイント。自問自答が繰り返されたなかで精神的にも疲弊していたはずだし、だからといってFC東京のエースとして臨む公式戦では結果を残さなければいけない。

心身両面ですり減っていた武藤嘉を温かく見守り、ときには相談にも乗ってきたFC東京の立石敬之ジェネラルマネージャーは、その後の武藤嘉の言動を「素晴らしいと思った」とこう続ける。

「見ている僕たちも『もういいんじゃないか』と考えていたぐらいですから、本人はもっと思っていたはずなんですよね。実際にそんなことを口にしてもいましたけど、それでもメディアに対応してサラリと、それでいて嫌味なくかわす力がある。顔に出してしまう選手が少なくないなかで、本当に上手に対応していましたよね。ズルさと言ったら本人が可哀そうだけど、大人の扱いがうまいんですよね」

もちろん、武藤嘉本人は意識していないはずだ。23歳の若武者がもつ誠実で謙虚な心が無意識のうちに体を動かし、いわゆる"神対応"を生み出してきたといっていい。

実際、在籍わずか1年半で旅立っていった武藤嘉に対して、「何で移籍させるんだ」とFC東京へ抗議してきたファンやサポーターはほぼ皆無だった。



■「海外組」として日本代表へ

誰からも愛され、背中を後押しされて挑んだマインツでは、デビューから3試合目にして初ゴールを含む2発をゲット。新たな伝説をスタートさせて、満を持して「海外組」として日本代表に合流した。

同じような軌跡を描いた選手として、立石ジェネラルマネージャーは長友佑都をダブらせるという。

長友もまた明治大学に籍を置いたままFC東京でプロデビューを果たし、瞬く間にオリンピック代表、日本代表とステップアップ。2010年のワールドカップ南アフリカ大会後にセリエAのチェゼーナへ移籍し、そのわずか半年後には名門インテルの一員となった。

「人に可愛がってもらえて、それを力にしていく才能があるという点で(長友)佑都に似ているところがちょっとあるかなと。人の話をしっかりと聞いて、それを吸収していく姿勢が可愛いから、指導者との付き合い方がすごくうまい。もちろん『成長しないといけない』という思いを常に強くもっているから、その時々で自分自身の足りない部分や課題が整理されている。『もっている』とよく言われるけれども、運を手繰り寄せる力を含めて、武藤がしっかりと準備してきたからこそなんです」

【武藤嘉紀を新天地マインツでも成長させる力 続く】
《藤江直人》

編集部おすすめの記事

page top