【LONDON STROLL】ウェストハムの本拠地移転…新スタジアムで揺れるサポーターたちの感情 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【LONDON STROLL】ウェストハムの本拠地移転…新スタジアムで揺れるサポーターたちの感情

オピニオン コラム
ウェストハム・ユナイテッドが本拠地ブーリン・グラウンドでの最終戦で勝利(2016年5月10日)
  • ウェストハム・ユナイテッドが本拠地ブーリン・グラウンドでの最終戦で勝利(2016年5月10日)
  • ウェストハム・ユナイテッドの本拠地
  • ウェストハム・ユナイテッドの本拠地ブーリン・グラウンド
  • ウェストハム・ユナイテッドの本拠地ブーリン・グラウンド
  • ウェストハムのサポーターがマンチェスター・ユナイテッドのチームバスを襲撃(2016年5月10日)
イースト・ロンドンのゾーン3に本拠地を置くプレミアリーグのウェストハム・ユナイテッド。来シーズンから本拠地を新スタジアムに移転するために、112年の歴史を持つ伝統あるスタジアムのブーリン・グラウンド、通称アップトン・パークに別れを告げた。

5月10日に行われたウェストハム対マンチェスター・ユナイテッドの一戦は、ウェストハムの今シーズンホーム最終戦となった。結果は3-2でウェストハムが逆転勝利し、最後に相応しい試合となった。

逆転負けを喫したマンチェスター・ユナイテッドは4位マンチェスター・シティとの勝ち点差が2となり、自力で4位に入る可能性が消滅。最終戦を待たずに、3位アーセナルはチャンピオンズリーグ出場圏の得られる4位以内が確定した。



試合前には本拠地移転でサポーター愛が悪い方向に爆発したのか、ウェストハムのサポーターがマンチェスター・ユナイテッドのチームバスを取り囲み、ビール瓶などがバスに投げ込まれ窓ガラスが大破する事件が発生した。そのため、キックオフ時間が45分遅れるという何とも嫌なスタートとなった。

イングランド・サッカー協会(FA)は公式声明を示し、事件を起こしたサポーターを強く非難。ロンドン警視庁と共に調査を進めることを表明している。今後、何らかの処分がウェストハムにも課せられるだろう。

フーリガンで名高い英国サポーターの“狂気”が少し垣間見えた気がする。しかし打って変わって試合と試合後の閉幕セレモニーでは、サポーターに配られたTシャツに身を包み、スタジアムがウェストハムのチームカラーの縞模様になり一体感を見せた。平日の試合で夜遅くにもかからず、満席のスタジアムで多くのサポーターや関係者が長年慣れ親しんだスタジアムへ別れを告げた。大きな節目となる感慨深い試合となった。

■6万人収容のビッグスタジアムへ

ウェストハムが来シーズンから本拠地とするのは、ロンドンオリンピックのメインスタジアムとしても記憶に新しいオリンピック・スタジアムだ。アップトン・パークの収容人数は約3万5千人。オリンピック・スタジアムは当初5万4000人収容に改修される予定でいたが、その後修正が加えられ6万人を収容する巨大スタジアムに変貌を遂げる。約6万人規模のスタジアムを持つチームは、ロンドンではアーセナルしかなく、ウェストハムにとってビッククラブへの第一歩なのかもしれない。



オリンピック・スタジアムの5万2000枚のシーズンチケット(年間シート)が早々に完売し、多くのサポーターがスタジアムの拡張を待ち望んでいたことがうかがえる。シーズンチケット5万2000枚を上回るのは、5万5000枚を販売するマンチェスター・ユナイテッドだけ。多くのスター選手を輩出してきた歴史あるウェストハムとはいえ、中位~下位が定位置のチームのシーズンチケット完売には、プレミアリーグ人気の底力を感じる。

しかし新スタジアム移転で、すべての人が喜んでいるわけではない。イースト・ロンドンの静かな住宅地の中心にあったスタジアム。試合のある日には、3万5000人の観客が訪れていたが、来シーズンからその人々が消える。もう試合後の地下鉄の大混雑をアップトン・パークの駅で見ることは無くなり、「あの町の活気が無くなる」とチームの変革に心から喜べない人も多いようだ。

駅からスタジアムへと続く道沿いには、パブやフィッシュ&チップスのお店、にぎやかになる商店街があった。ウェストハムの試合時のお店の収益は大きかっただろう。

試合前の暴動は、そんなさまざまな感情の入り混じった爆発だったのかもしれない。新スタジアムのこけら落としは8月7日に行わるプレシーズンマッチで、イタリア王者ユベントスと対戦する予定だ。新天地でのウェストハムの活躍に注目していきたい。
《Takaharu Osako》

編集部おすすめの記事

page top