■映画よりも映画らしい鮮やかな逆転劇
このラウンドが始まり、見ている人間はゴンガーザにとっても、前2ラウンドの攻勢が楽なものではなかったのだと分かる。ゴンガーザは失速し、金網にミルコを押しつけながら、膠着状態が続いた。
ミルコ足払い。ゴンガーザ離れ左右のパンチから、両足タックル。ミルコがタックルを切り、両者立ち上がると再びゴンガーザは金網へ押し込む。金網際で胸を合わせ時間を使おうとする。だがミルコの左ヒジが見事に側頭部をとらえた。
追撃のヒジも受け、足が言うことを聞かなくなったゴンガーザ。密着してくる相手を突き放し、ミルコはパンチでリングに倒す。グラウンドで上になると8年分の思いを乗せ、左ヒジの連打で滅多打ちにした。
最後は防戦一方の相手へ鉄槌を振り下ろし、レフェリーが割って入ったところで試合終了。大逆転劇に会場から、割れんばかりの拍手と歓声が起こる。観客は何度もミルコの名前を呼び勝者を称えた。
8年前の対戦で敗因に挙げ、この試合でも再三苦しめられたヒジを、これまでの分もまとめて返した最後の連打に、ミルコのファイターとしての意地を見せてもらった。
2011年にUFC137でロイ・ネルソンに敗れたあと、一時は総合格闘技からの引退も示唆し、再びK-1を主戦場にしたミルコ。だが1年後に復帰し、今回の試合後には「再びオクタゴンであなたを見ることはできますか」と尋ねられ、「もちろん」と力強く答えた。
再びタイトルを争うのは難しいかもしれないが、今のミルコが世界最高峰の舞台でどこまでやれるのか、限界まで挑戦してもらいたい。
《岩藤健》
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