【THE ATHLETE】選手生命の危機から涙の復活劇も、薬物使用疑惑に揺れるアンデウソン・シウバ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】選手生命の危機から涙の復活劇も、薬物使用疑惑に揺れるアンデウソン・シウバ

オピニオン コラム
アンデウソン・シウバ対ニック・ディアス(2015年1月31日)(c)Getty Images
  • アンデウソン・シウバ対ニック・ディアス(2015年1月31日)(c)Getty Images
  • アンデウソン・シウバ対ニック・ディアス(2015年1月31日)(c)Getty Images
  • アンデウソン・シウバ対ニック・ディアス(2015年1月31日)(c)Getty Images
  • アンデウソン・シウバ対ニック・ディアス(2015年1月31日)(c)Getty Images
2月1日に行われたUFC183のメインカード、アンデウソン・シウバ対ニック・ディアスの試合は、シウバが判定でディアスを下し骨折から13ヶ月ぶりの復帰戦を勝利で飾った。

試合後には涙も見せたシウバ。消極的な試合で途中、観客からのブーイングはあったが、選手生命の危機から復活したことを取りあえずファンは喜んだ。

だが程なくして信じられないニュースが飛び込んで来る。1月に受けた薬物検査で、シウバから禁止薬物の陽性反応が出ていたというのだ。また対戦相手のディアスからも試合後マリファナの陽性反応が出た。ディアスは過去にも検査で検出されたことあるが、シウバは初めてのことだった。

UFCではライトヘビー級王者ジョン・ジョーンズも先日、コカイン代謝物質の陽性反応が出ており、短期間で立て続けに薬物問題が取り沙汰されることとなった。






■その業績は薬で作られたものか否か

薬物検出の報道が出てから、シウバは「自分はパフォーマンス向上のため、如何なる薬も使ったことはない」と、一貫してドーピング疑惑を否定している。

世間の関心事は「シウバは本当にドーピングしていないのか」「しているとしたら、いつから使ってたのか」に集約される。特に後者は関心が高い。シウバは2013年7月にクリス・ワイドマンから生涯初のKO負けを喫するまで、約7年間連勝を続けていた。UFCミドル級王者のタイトルも連続10度防衛している。これは全階級を通じ最多だ。だが、もしその間もドーピングを続けていて、今回たまたま発見されただけだとしたら複雑な問題が生じる。

今のところ多くの声は、「シウバが禁止薬物を恒常的に摂取していた、彼のキャリアが薬によって作られたとは思わない」というもの。それはシウバ自身も言うように、彼の長いキャリアで陽性反応が出たのは今回が初めてであり、1度の陽性反応で18年のキャリアすべてが引っ繰り返されるものではないと考えているからである。

それでもESPNのmichael huangなどは「今回の陽性反応がシウバのキャリアを覆すとは思わないが、大怪我からの早期復帰を目指した彼が薬に手を出す動機はある。苦しいリハビリを乗り越えた彼の評判を危うくするようなものは見たくない。しかし、彼の献体から陽性反応が出たのは、偶然とは思えない」とした。






■現役ファイターが語るシウバ問題

毒舌で知られる現役ファイター、Michael Bispingは今回の件についてもBisping節全開。現地メディアのインタビューに「驚くことではない」としている。

「ニュースを見たときはまったく信じられなかった。ひとつではなく、2種類の禁止薬物が検出されたんだ。ガッカリしたし、アンデウソンに失望もしたよ。だけど"いや、ちょっと待てよ"と思ったんだ。そんな驚くほどのことかってね。俺はお人好しだから、誰もが自分と同じ昔ながらの方法でやってると思ったが、ショートカットやズルしたがるやつってのはいるもんだ。俺が思うに、アンデウソンが抜き打ち検査を受けたのは、これが初めてだったんじゃないか。あいつがキャリアを通してやってないなんて、誰が言い切れる? これからずっと言われ続けることになるだろうよ。あいつの業績は台無しだ」

■象徴とも言える選手のスキャンダルにUFCの対応は

UFCと禁止薬物の問題では、日本と馴染み深い選手でもジョシュ・バーネットや、アリスター・オーフレイムなどが過去に制裁を受けている。ジョシュはランディ・クートゥアに勝利し、UFCヘビー級王座を獲得したが、ドーピング検査で陽性反応が出たため防衛戦をすることなく王座剥奪となった。アリスターはUFCヘビー級王座挑戦を目前に、抜き打ちのドーピング検査に引っかかり9ヶ月の出場停止処分を受けた。

現在無冠のシウバにタイトル剥奪の心配はないが、出場停止処分が下されることになると、今度こそ彼のモチベーションが保てるかは分からない。この問題は現在ネバダ州アスレチックコミッションが追加検査を行っている。UFCのダナ・ホワイト社長は公式サイトを更新し、今しばらくシウバをサポートする考え示した。

UFCのみならず総合格闘技の代表的な選手として長く君臨し続けたシウバ。そのキャリアに疑惑の目が向けられるのは、競技全体への不信感に繋がりかねない。涙の復活劇から一転、疑惑の人となった彼に多くのメディアやファンが注目している。

《岩藤健》

編集部おすすめの記事

page top