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ニュースサイトにDMPは必要か

オピニオン コラム
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明日、シーセンス社のセミナーがあり、筆者が登壇する予定です。すでにセミナーは参加締め切りが終わってしまっているので申し訳ありませんが、内容の方向性などをここで共有いたします。

シーセンスセミナー詳細


◆本誌「CYCLE」を所有する株式会社イードとは

本誌「CYCLE」は株式会社イードの傘下にあります。株式会社イードは、デジタルのメディアを複数もつ企業です。

筆者は現在、イード社にてCYCLEの媒体統括/編集長という肩書きで動いていますが、あわせて現在はユニットという内部体制のもと、ユニット長として社内の媒体責任者とともに、複数媒体の運用をチームで行っています。

イード社では特にニュースメディアを20ほど運用しており、どの媒体も分野に特化しています。筆者とともに今回のセミナーに登壇する者は、自動車のニュースメディアである「レスポンス」の媒体統括をしています。このレスポンスもCYCLEと同じユニットで運用しており、シーセンスを導入/活用しています。

◆シーセンス、プライベートDMPとは何か

それでは、シーセンスとは何か、ということですが、デジタル媒体の数値管理のほか、プライベートDMP(データマネジメントプラットフォーム)という「箱」に、コンテンツの情報や、読者の情報を格納し、媒体が蓄積した資産を、広告を始めとするビジネスへ結びつけるツールになります。

現在イード社では、所有するデジタルニュースサイトに対して、全面的にシーセンスを導入しており、プライベートDMPに日々のデータを蓄積し、ビジネスの構築を行っています。

プライベートDMPは有料で、シーセンス社に月額をお支払いしてサービスを利用させてもらっています。決して少なくない投資になりますので、導入にあたっては、周辺理解や導入後のプランなどもある程度見えていないと投資が回収できません。

そのため、まずはCYCLEで試験的に導入をしまして、その後、ある程度の感触を得て全社導入に至ったという経緯があります。これについては複数媒体をもつ強みがいきました。すなわち、媒体Aでもし失敗に終わった施策でも、媒体Bで成功する可能性があるということ。もちろん、媒体Aで成功した施策は媒体Bでも展開することで、その効果を増幅することができます。

どのような施策を行ってきたかは、明日のセミナーで詳しくお話しいたします。

◆ニュースサイトでプライベートDMPを導入して投資を回収できるのか

先に記載したように、シーセンスDMPは有料です。この投資を回収できるのであれば、ビジネスが広がるのであれば、投資にも積極的になれます。しかし、うまく活用できないのであれば投資の意味がありません。セミナーでは、この部分のジャッジをしたい方が多いのではないかと思います。

イード社で言えば、セミナーでも一部お話しする予定ですが、投資分については、初年度通じて「上々の売上を得た」というところかと思います。この結果を得た背景には、媒体ディレクション、営業チームとの理解共有、エンジニアとの連動といったところが欠かせません。

施策はいくつも実施しており、うまくいったものばかりではなく、失敗の方が多いのではないかという肌感ではあります。施策を打つことにも、工数がかかりますので、その点ではトータルで見て、人件費という原価を検討する余地はあると感じます。イード社の複数媒体を所有する形態は、施策の横展開を可能にしており、リスクヘッジにはなっています。

DMPという「箱」に媒体のデータを整理して入れ、整理したデータを効率良く取り出して、クライアントの意向や媒体価値の向上を狙った施策に結びつける。そしてアクションを起こしてPDCAを回して結果を確認し、チューニングする。場合によってはピボットしたり諦める。うまくいけば横展開する。この繰り返しです。

◆なぜDMPなのか

こうした取り組みをなぜニュースサイトが行わなければならないのか。売上拡大やビジネスモデルの多様化、媒体価値の向上は、DMPを使わなくても実現できるかもしれませんし、しなければいけません。

ひとつの指標として、広告出稿を検討するクライアントのニーズがあります。ニーズに対して答えを持つことで、媒体としてクライアントから見える価値向上につなげなければならない。DMPは媒体コンテンツの整理整頓という意味で、クライアントからのニーズにお応えする手段のひとつを持つことになります。

もうひとつの指標として、読者に対する媒体価値があります。ニュースサイトのコンテンツの分散化が叫ばれて久しく、ひとつの媒体の数字を統合把握するのは必須です。そのなかで、媒体上でのコンテンツに対する読者の反応を把握し、状況に対してアクションにつなげる、というところまでをDMPで行います。ユーザー体験を損なうことなく、しかるべきユーザーにしかるべき施策を打ち込むことができるのは、DMPがあってこそです。

◆流入経路の多様化

ニュースサイトについて言えば、検索流入はさほど重要ではなくなっているというのが近年かと思います。ニュースの性質は、媒体が選んだコンテンツいわば「プッシュ型」です。一方で、検索するユーザーは大抵検索時は答えを求めていますが、ニュースは媒体がプッシュしているコンテンツであるため、検索に対する答えを用意したコンテンツではありません。

検索に対する答えを用意することを目指したコンテンツとして、「まとめ」などがあります。どんなワードが検索されるかを逆算して用意されたこれらのコンテンツは、ニュースのプッシュ型に対して「プル型」です。ブログなども、この方針でコンテンツが用意されていることが多く、検索ニーズのすくい上げに心血をそそぐ媒体運営者は星の数ほど存在します。

ニュースサイトという立ち位置から、この「まとめ」などのプル型コンテンツを用意する、という方法もあるかと思います。雑誌など作り込まれているコンテンツは、プル型の方向でもやれる余地がありそうですが、短信や速報を用意するニュースサイトであればあるほど、プル型には振りにくい。そこで、DMPを活用した読者分析による、ユーザー体験の向上で、プッシュ型のコンテンツを読者最適化していく必要が少なからずある。これが現段階かと思います。
《土屋篤司》

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