ともに沖縄県出身の二人三脚でつかみ取った栄光だが、具志堅会長は「ボクシングジムを閉鎖しようと思った。大吾がチャンピオンにならなければ、もうボクシングを辞めようかと思っていた」と胸の内を明かす。ジム設立から22年。悲願のタイトルだった。
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比嘉大吾(右)がWBC世界フライ級新王者に
(c) Getty Images
20年以上のジム経営では有望な選手も少なからずいたが、彼らには足りないものがあった。
「彼らには勇気がないっていうだけ。ボクシングはやっぱり勇気と技術と、すべてが要求されるスポーツ。格好だけじゃない。(リングでは)助ける人もいないから自分で結果を出すしかない」
イチから育て上げた比嘉を「大吾はそういうものを持っている。チャンピオンになる顔をしている」と絶賛する。王者奪取に加えて、比嘉は日本初となる13戦全勝全KOを成し遂げた。
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比嘉大吾
具志堅会長は「沖縄にはまだまだ戦う若者がいると思う。いい指導者がいれば相当発掘できる」と、比嘉に続く選手の登場に期待を寄せる。
その一方で「なんで(沖縄は)駅伝が弱いのかなあ…」と首をかしげる。マラソンと高校駅伝が好きで40年以上観てるという具志堅会長は、「暑いから走らないんだろうなあ。自転車も乗らないもの」と仕方なさそうに苦笑。
沖縄出身のスポーツ選手にはゴルフの宮里藍や自転車競技の新城幸也など海外で活躍する選手も多い。「重量挙げもすごいでしょ」と続け、リオデジャネイロ五輪男子62kg級で4位になった糸数陽一を「親戚だからね、お袋の」と教えてくれた。
比嘉の快挙に喜びつつも、WBA世界ミドル級タイトルマッチで敗れた村田諒太(帝拳)についても言及した。「ワンサイドじゃないかと思っていた。逆だもんな。終盤、村田がもう1回仕掛ければよかった。前半に倒しているのだから、終盤に見せ場があれば…」と残念がる。
村田を気づかいながらも、「リングの中で判定が出たら終わり。ベルトは勝った方が持って帰る。再戦もしたくないよね」と渋い顔。
20日の試合後、WBAのヒルベルト・メンドサJr会長がツイッターで村田戦の判定について謝罪。再戦の指定を出すなど異例の事態を招いている。
テレビ番組では軽妙なトークで人気の具志堅会長は、「テレビを観ている人はウソをつかない。面白い試合が観たい。面白くなければチャンネルを回されてしまう。バラエティーの方が面白い」とボクシング界の現状も心配していた。