「多分そこが一番買われているところだと思うので、そこを出していきたい。他のことばかりに気を取られてしまいすぎると、自分のよさというものも出せなくなると思うので、まずはそこを意識してやりたい」
■予想もしていなかったA代表招集
セレッソに戻ってきたことには、いっさいの後悔もない。ドイツの地でプレーしながら、中学生時代からひと筋で育ってきた古巣に対する愛情の深さを再確認できたことが、山口の背中を押した。
考え方が甘い。見損なった。メンタルが弱すぎる――ネット上には、復帰を批判するコメントがあふれ返った。すべてを真正面から受け止めたうえで、セレッソのJ1復帰のために全身全霊を尽くす。
不退転の覚悟を胸中に秘めながら、J2の戦いに身を投じてから約2カ月。予想もしていなかったA代表への招集と、苦楽をともにしてきたチームメートたちとの再会が、山口の心に新たな炎を灯しつつある。
「代表に来たら来たでやっぱりいろいろな刺激がありますし、それを自分のプラス材料に変えていきたい。代表というより高いレベルのなかで自分自身にもっと厳しく問いかけて、一つひとつのプレーに反映させていきたいという思いはありますね。結局は戦うところの部分だと思うので、そこを前面に押し出していけたらいいかなと」

山口蛍 (c) Getty Images
ボランチとして先発フル出場したタイ戦で見せた、群を抜く存在感の大きさは再スタートにかける思が凝縮されていた。中盤における潰し役だけではない。攻撃へのつなぎ役としても輝きを放った。
たとえば後半18分。MF香川真司(ボルシア・ドルトムント)からマイナスのパスを受けると、前線のMF本田圭佑(ACミラン)へワンタッチで絶妙のスルーパスを通す。
残念ながらゴールには結びつかなかったが、ボールを奪って、かつ速く攻める。守備に安定感をもたらす「黒子」としてだけではなく、攻撃に絡む「主役」のひとりとしても機能していた。
期待されながら、グループリーグ敗退を味わわされたワールドカップ・ブラジル大会。3試合すべてに出場している山口はコロンビア代表に打ちのめされた翌日に、率先してグラウンドに飛び出している。
一緒にボールを追ったのはMF清武弘嗣(現セビージャ)や酒井宏樹(現オリンピック・マルセイユ)、酒井高徳(現ハンブルガーSV)の両サイドバックをはじめとする、同世代の選手たちだった。
次のロシア大会は自分たちが中心になる――悔しさを誓いに変えてから2年とちょっと。紆余曲折を経て、精神的にもたくましくなった山口が、中盤の将軍を拝命する戦いへのスタートラインに立った。