「いや、もう驚きというか、いまだに何でというか…まったく覚悟はしていなかったので」
今回だけではない。しばらくはハリルジャパンに招集されないのではないかと、山口は覚悟を固めていた。話は山口が古巣のセレッソに電撃的に復帰した6月19日にさかのぼる。
■半年で終わったブンデスリーガへの挑戦
昨シーズンのオフに、山口は長年の夢でもあった海外移籍を果たしている。しかし、ブンデスリーガのハノーファーにおけるチャレンジは、わずか半年で幕を閉じることとなった。
3月29日のシリア代表とのアジア2次予選で、顔面の複数個所を骨折したこともあって、ハノーファーでの出場は6試合に終わった。そして、ハノーファーも2部への降格を強いられている。
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ハノーファー時代の山口蛍 (c) Getty Images
キリンカップへ向けて、5月下旬から千葉県内で行われた海外組だけによる短期合宿。バヒド・ハリルホジッチ監督はメンバーに招集していない山口をあえて呼び寄せて、一緒に練習させている。
山口にかけている大きな期待の表れであり、実際、ヨーロッパ視察中や東京・文京区にあるJFAハウス内の監督室で面談した際には、指揮官はこんな言葉を山口にかけている。
「さらに伸びるためにも、ハノーファーへ残ってしっかりと先発を勝ち取ってほしい」
しかし、山口は日本への復帰を決意する。しかも、J1ではなくJ2へ。8月25日に行われた代表メンバー発表の席で、ハリルホジッチ監督は自らの説得に応じなかった山口に不快感を示している。
「ホタルに関しては、まったく喜んでいない。彼を元気づけるために私はヨーロッパへも行った。いいプレーをするためのクオリティーはすべて持っていたし、ドイツでしっかりと戦えば、A代表にとって非常に興味深い選手になるはずだった」
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山口蛍 (c) Getty Images
山口の復帰が発表されたとき、指揮官は夏季休暇を兼ねてフランスで開催されていたユーロ2016を視察していた。再来日した8月上旬にも、山口に関しては辛辣な言葉を残している。
「いまの状況では、A代表で先発するのは難しい」
これを伝え聞いたからこそ、山口もJ2の舞台で戦っている間は代表と疎遠になると覚悟していた。しかしながら、山口は指揮官を魅了してやまない、絶対的な武器をその体に搭載していた。
「日本に戻ってきたことに関しては高く評価していないが、いい選手を簡単に手放すこともできない。ホタルのようにしっかりとボールを奪える選手はなかなかいない。J2でどのようにプレーしているのかも3回ほど見に行った。ここにいるということは、彼がいいプレーヤーであるということだ」
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