しかし、時代の趨勢もあるのだろうが商業校は女子生徒の増加があり、逆に男子生徒の減少で衰退してきた。それでも県岐阜商や今春に復活を示した高松商、富山県の高岡商と富山商、昨夏ベスト8まで進出した秋田商のように健闘している商業校は多く、甲子園で活躍するところも何校かある。
ところが工業校となると、ますます少なくなっている。工業校の雄ともいえる熊本工だけが何とか2013年にも出場してその存在を示した。また、秋田の大曲工と愛知の豊橋工も2015年春の出場で気を吐いた。とはいえ、全国的には非常に厳しいのが現状だ。
かつて埼玉県で一時代を築き、工業校の雄でもあった川越工も低迷期が続いて苦戦をしていた。1971年夏には甲子園ベスト4にも進出している伝統校だ。その強い川越工を何とか蘇らせようと奮闘しているのが、母校監督に就任して10年目の熊澤光監督である。
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川越工・熊澤光監督
前任の坂戸西時代には埼玉大会決勝まで導いた実績もある。「今、工業校が元気がないので、野球部が頑張ることで、何とか学校そのものも活性化させていきたい」という強い気持ちもあり、野球部の活躍で活力を生み出していくことに情熱を賭けている。
その想いが徐々に浸透し、チームとしてのまとまりも出てきて、何よりもチームに元気が出てきた。そして川越工の野球部が元気になると、以前から応援する人たちも力が入っていくという現象も顕著になってきている。初戦のスタンドにも、多くのファンも詰めかけてくれた。これが学校の活性化にもつながっていく。
大会になると、強い川越工の時代を知る古くからの応援者も期待も込めて多く詰めかけるようになっている。伝統の応援団も、野球部とともに活力を得てきている印象だ。ここ4年では、夏の大会は3度シード校として望んでいる。
「県大会でベスト16あたりまでは、何とか進めるようにはなってきているとは思います。ただ、そこからあともうひとつの壁は、正直なかなか厳しいところもある。だが、そこを越えていかないといけません」と熊澤監督は意欲的だ。
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伝統の二段重ねの川越工ユニフォーム
指揮官の想いに応えるべき選手たちも、10年前の就任時よりははるかに元気が出てきているという。伝統のユニフォーム「KAWAGOE KOGYO」の二段重ねの胸文字は今も変わらない。このユニフォームを見ると、川越工の強かった時代を思い出す人も少なくない。
「昔に比べると、生徒たちはみんなおとなしくて。それは教育ということで言えばやりやすいかもしれませんが、勝負事ではやはり向かっていく気持ちも大切です」
熊澤監督はおとなしい選手たちにアクセルを踏ませていくことも必要だとも感じている。「工業校に活力を、野球部の活躍で元気を取り戻せ」という想いを背負って、川越工は次へ向かって進んでいく。