時間にしてわずか数秒。ボールにまったく関係のないエリアでの出来事だったゆえに、ややもすると見逃してしまったファンやサポーターもいたかもしれない。
後半のキックオフを告げるホイッスルが鳴り響いた直後だった。右タッチライン際にポジションを取っていたジュビロ磐田のMF小林祐希が、対戦相手の東京ヴェルディのベンチへ近づいていく。
視界には、ベンチ前のテクニカルエリアで選手たちへ指示を送っていたヴェルディの冨樫剛一監督がとらえられていた。目の前に迫ってきた小林がそっと差し出した右手の意味に、冨樫監督も気がつく。
ほんの一瞬のタッチ。言葉はいらない。笑顔だけですべてが伝わった。ヴェルディユース時代に冨樫監督の指導を受けている小林が、照れくさそうに明かす。
「まだ挨拶をしていなかったので、近くにいたからちょうどいいと思って。恩師のなかの一人なので、リスペクトの思いを込めました」
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《藤江直人》
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