
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フレーム自体に弾くような加速性はないものの、必要な剛性はしっかりと出ており、ジェイミス・ゼニスやピナレロ・FP5に似た味付けと言えるだろう。ノリノリでもイケイケでもないが、まろやかに熟成した果実のような感覚は魅力的。路面をカキンと弾く高剛性に慣らされてしまった身体にはことさら刺激的とは言えないが、スルスルッとスピードを上げていくしなやかさはなかなかに気持ちのいいものだ。
快適性は、ごく一般的なカーボンモノコックロードフレームのそれだ。高周波振動はキレイに吸収してくれているが、大きめの衝撃はゴツンと伝えてくる。しかしスピードを上げるほどにフラットな乗り味になるのがRTカーボンのらしさだろう。
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直安性はかなりよく、いったん高速にのせるとビタッと安定して真っ直ぐ走ってくれる。これはRTカーボンならではの持ち味だ。最初は個性に乏しいバイクだと思ったが、しっとりとしたフォークによる絶大な安心感を味わいながら乗り込んでいくうちに、コイツのキャラクターが光るシーンは中速~高速域の巡航だと思った。
乗り始めた当初は決して良いとは思えなかったフォークだが、もし、上半身の振れがハンドルに伝わってしまう人や荒いハンドルさばきをするライダーの運転でも安定感を殺さないために、フォークをわざと適度にダルな味付けにしているのだとしたら、その設計意図は良い方向に効いている。それなりのスピードで巡航するには最適な味付けがなされたフォークかもしれない。それを意識しながら新緑の森の中を走ってみたが、事実、今までにないほど上半身がリラックスでき、快適な走行を心から楽しめた。
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ヒルクライムで軽さは感じにくい、と最初は思ったのだが、乗り込んでいくにつれ印象はだんだんと変化する。このハンドリングとフレームの味付けに慣れてくると、緩斜面を軽目のギアで走るぶんには、シッティングでもダンシングでもサクサクとした軽い感覚を発見できる。リズミカルなウィップは心地よいが、しかし急斜面をビッグギアで踏み込むと、さすがにメインフレームのソフトさが顔を出す (ホイールの影響も大きいだろうが)。フォークはやはり横方向にはソフトなようで、登坂でフロントに荷重をかけてダンシングするとフロントホイールの向きに落ち着きがなくなるのだが、慣れるにしたがって気にならなくなるレベルだろう。
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見た目から受ける印象や固定観念だけをもってして、「さすがは質実剛健なジャーマンブランドだ!」 などとステレオタイプかつ軽薄なことはあまり言いたくないのだが、真面目に作ってある、という印象は確かに受ける。
市街地をチマチマ走ったりヒルクライムでゴリゴリやるより、大陸横断的とまではいかないにしても、僕ならたゆたうようにして大自然の中を走りたい、と思った。とはいえ、バランスに長け、様々なシーンをそつなくこなしてくれるだけの性能は持っている。突出した個性でライダーの感情を煽る種のバイクではないが。
だが、だからこそ、“自然の流れ” に身を任せて走らせるのが気持ち良い。自然の流れとは、乗り手の精神状態や体調、疲労度、天気や気温・湿度などの外的気象、そして走っている場所が独自に持つ (スピリチュアルな意味も含めての) 密度や世界観。もちろん様々な斜度や路面状況や景色なども含まれる。このRTカーボンに乗っていると、それらすべての流れに身を任せて、それらすべてにサラリサラリと対応しながら、どこまでもおおらかに走れるような気がする。もちろん乗り手のレベルやスキルも問うてこない。痛快な感覚や岩のような剛体感とは無縁だが、シルキーでゆったりとしたライディングフィールが楽しめる。
こんなバイクなら、彼方の目的地目指してハイスピードでクルーズするのが最高だろう。
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