【THE REAL】湘南ベルマーレの心臓・永木亮太が秘めた可能性…ハリルホジッチ監督も惚れた心技体 2ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】湘南ベルマーレの心臓・永木亮太が秘めた可能性…ハリルホジッチ監督も惚れた心技体

オピニオン コラム
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ケガを押して出場してきた軌跡を、美談にするつもりはない。しかしながら、試合後のケアを怠らず、コンディションを入念に調整してきたからこそ、曹貴裁(チョウ・キジェ)監督も先発リストに永木を書き記してきたのだろう。

右ヒザについて、永木はこうも語っている。

「強いボールを蹴ることに関しては、実はほとんど問題ないんです。それ以外のプレーではちょっと問題があるので、まだテーピングを外せないんですけど」

■強い決意で直接フリーキックを狙う

言葉通りに永木の右足から放たれた強烈な弾道が、美しい弧を描きながらゴールネットに突き刺さったのは9月26日。ホームに横浜F・マリノスを迎えた、セカンドステージ第12節の後半25分だった。

相手ゴールまで約30m、ほぼ正面の位置で得た直接フリーキック。ゴールキーパー飯倉大樹の指示で、マリノスは3枚の壁を並べた。チーム内でのやり取りを、飯倉が明かす。

「本来ならば2枚でもいいくらいの距離ですけど、(永木が)無回転シュートを打てるのがわかっていたので3枚にしました」

向かって左から169cmの齋藤学、178cmの中村俊輔、176cmのアデミウソンが壁を作る。高さに対するプレッシャーをほとんど感じない状況で、永木は決意を固めていた。

「中澤(佑二)さんとか、背の高い選手ではなかったので。これは狙いどきだと。自分にとっては狙える距離だったし、あの時間帯だったので、変に中で合わせるよりは思い切って蹴ろうと」

直接フリーキックを狙う場合、相手に的を絞らせないために複数の選手がボールの近くでスタンバイする。ベルマーレの場合は永木と、左足からの正確なクロスを武器とするDF三竿雄斗が立つ。

しかしながら、マリノス戦における三竿は蹴る素振りすら見せなかった。後半9分に許した先制点に絡んでいた永木はミスを取り返すべく、三竿に対して「僕が蹴る」と強い決意で告げていたからだ。

果たして、5mほどの助走から勢いをつけた永木が右足を振り抜いた瞬間、三竿はデジャブを覚えていた。

「(永木)亮太くんは清水戦でもあの距離から決めているので。(壁を越えた瞬間に)入ったと思いました」

ベンチで戦況を見つめていた曹監督も、同点ゴールを予感していた。

「最終的には選手たちが判断していいと言いましたけど、実は(直接狙うのとは)違うことを指示していたんです。ただ、あの3枚の壁を見て、枠に飛べばいけるかなと。本当にスーパーなゴールだった」

■完璧なハーモニーを奏でた会心の一撃

インサイドキックとインステップキックのちょうど中間くらい、親指のつけ根から甲にかけた部分でこすり上げるように放たれた速く、強いボールは飛び上がった壁の右、アデミウソンの頭上を越えてから急降下。カーブの軌道を描きながら、飯倉が必死に伸ばした右手の先とバーをかすめてゴール内に弾んだ。

ベルマーレのサポーターの大歓声、そしてマリノスのそれの悲鳴とどよめきが交錯するなかで、飯倉は狂喜乱舞する永木とベルマーレの選手たちを脱帽の表情で見つめていた。

「ちょうど僕のポジションの前にフジくん(藤田祥史)が入ってきてブラインドになり、ボールの軌道が見えなかったというか。でも、ボールの質もよかったし、いいシュートだったと思います」

185cmのFW藤田が動き、マークについた187cmの中澤にちょうど隠れる形で、永木が蹴る瞬間を視認できなかった。確かに飯倉の反応は微妙に遅れていたが、そうでなくても防げたかどうか。

スピード。縦方向と横方向への鋭い変化。ゴール左上の隅を正確に射抜いたコース。すべてが完璧なハーモニーを奏でた会心の一撃を、直接フリーキックからの得点で歴代1位にランクされる中村の眼前で決めた永木は「イメージ通りでした」と笑顔で振り返った。

「自分も少しはフリーキックを蹴れるぞ、というのを見せられたかな。自分は落ちるボールを蹴るのが得意ですけど、速いボールも蹴れる。狙ってよかった」

【湘南ベルマーレの心臓・永木亮太が秘めた可能性 続く】
《藤江直人》

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