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【THE REAL】湘南ベルマーレが急成長を遂げている理由…「湘南スタイル」に導かれる現在・過去・未来

オピニオン コラム
湘南ベルマーレ
  • 湘南ベルマーレ
  • 遠藤航 参考画像(2015年8月9日)
  • 曹貴裁監督 湘南ベルマーレ公式サイトより
  • 遠藤航 参考画像(2015年3月31日)
ピッチとスタンドの間で大歓声と拍手、そしてチャンスを逃したときのため息がシンクロされる確率がさらに高まった今シーズン。財産でもある「湘南スタイル」を、加速的に成長させる吉報も届いた。

冒頭でも記した遠藤のハリルジャパン選出。ルーキーだった2011年シーズンから、最終ラインのレギュラーに定着。ベルマーレの歩みとともに成長してきた遠藤の飛躍は、貫いてきた「湘南スタイル」のベクトルが正しかったことを証明していた。

しかも、ハリルホジッチ監督は遠藤を高く評価し、右サイドバックとボランチで併用。寄せられる期待を満たすパフォーマンスを演じた遠藤へ、曹監督が言葉を弾ませたことがある。

「僕が何かを言うよりも、(遠藤)航が『ベルマーレも代表も目指している方向は同じだよ』と言ってくれたほうが、それこそ10倍くらいの力で選手たちに浸透していくと思う」

東アジアカップを終えて合流した遠藤は、さっそくベルマーレに対するハリルホジッチ監督の言葉をチームメイトたちに伝えた。キャプテンのMF永木亮太が笑顔をうかべながら明かす。

「湘南を代表して堂々とプレーしていた航は本当にすごいと思ったし、自信をつけて帰ってきてくれた航の姿を見ると、逆に自分たちも刺激を受ける。チームにいい雰囲気が生まれた意味でも、航の存在はすごく大きいと思いますね」


遠藤航

永木は中央大学4年生だった2010年シーズンに、JFA・Jリーグ特別指定選手としてベルマーレに登録され、11試合に出場している。同じシーズンに遠藤も、ベルマーレユースに所属したままの2種登録選手として、弱冠17歳にしてJ1の舞台を経験している。

ほぼ同じ時間を共有してきたからこそ、永木は自分のなかに「化学変化」が生じていると実感している。

「航とはずっと一緒にやってきたので、どのようなレベルの選手なのかということはよくわかっている。航が代表に入ってあそこまでできるということで、逆に自分に置きかえることもできる。代表入りは大きな目標のひとつ。チームでしっかりやっていけばチャンスが訪れると思えるし、目標へ少しでも近づけるように日々努力していきたい」

カンボジア、アフガニスタン両代表と対戦する9月のワールドカップ・アジア2次予選に臨む日本代表メンバーが8月27日に発表され、東アジアカップに引き続いて遠藤が選出された。

本田圭佑(ACミラン)、香川真司(ボルシア・ドルトムント)をはじめとするヨーロッパ組と遠藤が競演する姿が現実のものとなれば、さらに大きな刺激がベルマーレにもたらされるはずだ。

■バイエルン・ミュンヘンに感銘を受ける

ヨーロッパのサッカーに造詣が深く、シーズンオフには現地へ足を運ぶ曹監督は、前出の著書のなかでブンデスリーガの名門バイエルン・ミュンヘンに大きな感銘を受けたことを明かしている。

ブンデスリーガとUEFAチャンピオンズリーグの二冠を獲得した直後の2013年6月。新監督にバルセロナで一時代を築いたジョゼップ・グァルディオラ氏を招聘した改革を、「さらなる細胞分裂を生じさせて、新たな次元へ進もうというクラブの意思がひしひしと伝わってくる」と称賛した上でこう記している。

「過去から現在を経て未来へとつながる長い歴史のなかで、ベルマーレもバイエルンのようであってほしい。この先、僕がベルマーレからいなくなっても、前へ進むための羅針盤として『湘南スタイル』を合言葉にしてもらえれば、これほど幸せなことはない。

監督が代われば、サッカーのやり方も変わるだろう。しかし、それはあくまでもピッチ上に限定されたことだ。見ている側もプレーしている側も面白いと感じられるサッカーを共有していく姿勢だけは、ベルマーレ独自のテーゼとして貫いてほしい」

今シーズンの目標はJ1に「住む」、つまり定着することを掲げている。フロンターレ戦の勝利で年間総合勝ち点が「36」に到達し、昨シーズンに15位で残留した清水エスパルスの勝ち点に並んだ。

残留決定はもはや時間の問題だが、たとえ今シーズンの目標を成就させても、曹監督や選手たちが満足感に浸るのは一瞬だけだろう。

たとえるならば流れる雲をつかむような、ゴールなき壮大なチャレンジとなるだろうか。育んできた「湘南スタイル」をさらに深化させた先に広がる理想の空間へ向かって、ベルマーレは全力で走り続ける。
《藤江直人》

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