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【THE REAL】27歳の遅咲きゴールキーパー・秋元陽太…湘南ベルマーレの赤丸急上昇

オピニオン コラム
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5月14日に敵地で行われた柏レイソル戦。秋元は前半の終了間際に相手選手と空中で激しく激突し、脳しんとうを起こした。ハーフタイムまでは我慢してプレーしたが、めまいが治まらない。

「このまま無理をしてプレーしたら、チームに迷惑をかけてしまうと思って…」

後半から投入されたイ・スホンが開始早々のピンチを防ぐなど、レイソルの猛攻撃を最後まで防ぎ切った。2人で守ったレイソル戦を含めて、無失点試合はスコアレスドローで終えたサンフレッチェ戦で4試合連続に伸びている。その間の成績は2勝2分けで、順位も7位にまで急浮上してきた。

たとえば後半に一気呵成の4ゴールをあげて完封勝利を収めた5月23日の清水エスパルス戦では、相手のエース、元ナイジェリア代表のFWピーター・ウタカのシュートを4度も弾き返した。秋元がひとつでも決められていたならば、おそらく勝敗とスコアが逆になっていただろう。

■ふたりのライバルから刺激をもらう

コンサドーレ札幌から加入して1年目のイ・スホンは、ナビスコカップで好セーブを続けている。2シーズンでまだ公式戦1試合にしか出場していない梶川裕嗣は、常に練習からチームを鼓舞する存在だ。25歳のホスンは188cm、23歳の梶川は185cmと、ともに181cmの秋元よりも上背がある。

ふたりを強力なライバルと認識しているからこそ、トルコキャンプで頭をもたげたある種の満足感は、いまや脳裏から完全に駆逐された。ふたりのキーパーへのリスペクトの思いを力に変えながら、秋元はJ1の猛者たちと対峙している。

「ふたりからは本当にいい刺激をもらっているし、感謝している。競争はどのチームにも必要だし、僕自身、試合に出られないときにどうするかを、マリノスで素晴らしい先輩たちから学んできた。僕が出させてもらったときは、ホスンと裕嗣の分も頑張って勝とうと思っている」

マリノスで力を溜め続けた、自身の原点とも呼ぶべき雌伏の時期を思い出しながら努力を積み重ねる秋元へ、大倉社長も「頼もしい男ですよね」と目を細めながらこう続ける。

「最初の10試合くらいでハイボールやチャレンジなどの面で課題が出たけれども、それらを乗り越えられるだけの秋元の素晴らしい人間力というものが、いま現在の安定したプレーにつながっている。キーパーが出すオーラというのは非常に大事だし、大崩れをしなくなったという点で、2年前にJ1を戦ったときとは明らかに違います。いままでのベルマーレにはそういうキーパーがいなかったから、もっともっと成長してほしいですよね」

ゴールキーパーは「30歳からが勝負」とよく言われる。ともに4度もワールドカップ代表に選出された川口能活(FC岐阜)と楢崎正剛(名古屋グランパス)も、積み重ねてきたあらゆる経験を糧にして、30歳を超えてからパフォーマンスに円熟味が加わってきた。

だからこそ、秋元も先輩たちがたどった軌跡をトレースしてきたと打ち明ける。

「30歳までの自分がどれだけできるかだと、僕は思っているので」

10年目を迎えたプロサッカー人生で初めて託された守護神の象徴『1』番は、秋元のなかで「責任」の二文字を増幅させたという。ピッチを離れれば黙して語らないたたずまい味方に安心感を与える一方で、髪が短く刈り込まれ、あごひげと口ひげがたくわえられたワイルドなルックスから放たれるオーラは、試合を重ねるごとに相手攻撃陣を畏怖させる迫力を帯びてきている。

たとえるならば「氷」と「炎」をその体に同居させるパーセンテージを状況に応じて変化させながら、秋元はベルマーレとともに成長を続けていく。



【やわらかスポーツCYCLE】
《藤江直人》

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