空は梅雨模様。しかも、木々に視界を遮られ、井殿山頂からの展望は良くない。頂上にはほんの少し留まっただけで、下山することにした。しかし、頂上からの下山道は土砂崩れで行き止まり。仕方なく、もと来た道を戻る。
◆コンパスの指す「北」は「真北」ではない?
下山途中の伐採地跡で、山本さんがまた地図とコンパスをザックから取り出した。「こうして、地図とコンパスを使いながら歩くのも、里山の楽しみ方のひとつです」
「はあ」と気のない返事をする筆者を余所に、地図にコンパスを「セット」する。
「地図の上は、基本的に「真北」を指します。コンパスの「北」は、「磁北(じほく)」といって、「真北」よりも数度ずれているんです。だから、この地図には何度ずれているかが書かれているんですね」
急遽、山本さんの里山歩きガイドが始まった。山本さんが経営するストームフィールドガイドでは、水辺のアクティビティだけでなく、こうした山でのアクティビティもおこなっている。今回はその一部を披露してくれた。それは、地図とコンパスを使った里山歩きの楽しみ方である。
低い山とて、平地より当然標高は高い。高い場所ならば、見える景色は変わってくる。街を見下ろし、遠くの山を見渡せる。
だが、その山が何という名前の山なのか。茨城県ならば筑波山などは特徴のある姿形をしているからひと目でわかるものの、それ以外の山は山好きでなければわからない。これがわかると、その景色の楽しみ方がまるで変わってくる。すなわち、里山歩き・低山ハイクがよりいっそう楽しめるという訳である。この地図とコンパスを使って目標の山を確かめるのが「山座同定(さんざどうてい)」だ。
山に登り、山を知る。地図とコンパスを持って山を歩けば、小さな山旅に新しい魅力を付け加えることができる。
《久米成佳》
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