それから低山を登るようになって、登った山から赤城山を眺める機会が度々訪れる。(あれがあの赤城山かぁ)と感慨に耽るも、しばらくは浅間山とごっちゃな存在であった(どちらも比較的わかりやすい山容なのに)。さらにしばらくすると、長い裾野の山が赤城山だと見分けがつくようになって、見分けがついたら愛着がわき、「いつか登ってみたい山リスト」の上位にランク付けされるようになった。
そうして、赤城山に登る日が訪れた。コースは、黒檜山~駒ケ岳の周回コース。せっかく登るならば、やはり赤城山の最高峰に登りたかった。

熊に警戒しながら登っていく
大沼近くの店の人や、通りすがりの登山者から、しきりに「熊に気をつけて」と言われる。山の付近にも「熊に注意」の看板がちらほら。そんなに熊、熊、言われたら、熊鈴を買わにゃならん。山に登りはじめて早5年。遅まきながら、熊鈴を購入することになる(〆切寸前まで行動に移さないタイプ)。
チリンチリンと、初めて手に入れた熊鈴を、無暗に鳴らしながら登山口へ。登山口から頂上までは、急な登りが延々と続く。白樺の木や熊笹が生える光景を、最初は珍しがってはしゃいだものだが、あまりに登りが長くて、あまりに景色が変わらないので、だんだんと嫌気が差してきた。さらに、夏の暑さが体力を削り取り、汗が滝のように流れ落ちる。
登山開始から小一時間経った頃、下山中の登山者とすれ違い「あとどれくらいで頂上ですか?」と聞いてみると「あと半分くらいです」と返ってきた。あと十分くらいだと思っていたのに。登りはもう十分な気持ちである。

絶景ポイントからの残念な眺め
なんとか頂上についたものの。あたりは真っ白な雲に覆われていて、見えるはずの絶景が見えない。一面に広がる白の世界。カメラのピンとも合わないくらいだ。「これはこれで絶景だ」と思えなくもないが、苦労して登った分、期待していた景色が見えないのには少々がっかり。
それでも、キツい登りを耐えに耐え、登りきった達成感は言葉では表現し難いものがあった。そうだな、強いて言うなら「赤城の山は今宵に限らず」。今回だけなんていわずに、もう一度登ってみたいと思った。