茨城県つくば市にある宝篋山(ほうきょうさん。通称・小田山)。頂上にある電波塔が目印のこの山は、近年登山者たちの人気を集めている。
◆登山ビギナーのための里山・宝篋山
その理由は、宝篋山が小さいながらも魅力あふれる山だからであろう。宝篋山は、標高461mと低山中の低山ではあるが、6つの登山コースが用意されている。沢の流れるコース、奇岩の多いコース、史跡のあるコース、景色の良いコースなど、どのコースも個性的で歩いていて面白い。登山道は整備され、休憩のためのベンチもあちらこちらに設置してある。道案内の看板も至るところにあり、初心者にも優しく正しい道を示してくれる。
◆スケールの小ささが、可愛らしく、楽しい。
また、看板は道しるべだけでなく、「宝命の滝」「展望岩」などのように滝や岩にも付けられており、これらが何となしに可愛らしく感じられる。看板の付けられた滝や岩は、名所というには少々寂しいものばかりなのだ。どれも小ぢんまりとしていて、スケールが小さい。だが、看板を付けることによって、名所らしく見えてしまい、楽しめてしまうから不思議である。
こうして名付けられた滝や岩、史跡などを巡りながら歩くと、たっぷり一日遊べてしまう。頂上からは筑波山や霞ヶ浦を眺めることができ、空気が澄んだ日であれば富士山の姿を拝むこともできる。危険な場所が少ないため、子どもでも大人でも、誰でも登山が楽しめる宝篋山は、里山のテーマパークといえる。
登山日は5月上旬。新緑が美しいこの季節に、私は無性に宝篋山に登りたくなった。他のどの山でもなく、宝篋山に登りたい。そう思ってしまうのは、宝篋山の小さな魅力にとりつかれているからに違いない。
はたして、今回はどんな旅が待っているのだろうか。期待に胸をふくらませながら、ザックに荷物を詰め込んで、登山道に入った。
《久米成佳》
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