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なぜ『ブンデスリーガ』に観客が集まるのか…特殊なリーグ構造と歴史を紐解く

オピニオン ボイス
ブンデスリーガ・参考画像
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このプロサッカー部門の「切り離し企業化」に伴って、DFBはライセンス制度を刷新する。新しいライセンス制度の基準は6領域にわたるが、なかでもブンデスリーガの特徴は「権利基準」にある。権利基準には、次の3項目が含まれている。

1つ目は、母体フェラインから切り離された企業は、母体フェラインと同じ地域にあり、そのフェラインと同じ名称を用いなければならないこと。2つ目はマルチオーナーシップの禁止。1つの企業が2つ以上のチームに影響を及ぼすことはできない。3つ目が、いわゆる「50+1ルール」だ。この「50+1ルール」には、サッカーへの投資企業の影響力を最小限に抑えようとするねらいがある。ライセンス取得のためには、母体フェラインは投資企業に対して50%よりも多くの投票権所有者の参加が必要となる。つまり、投資企業ではなく、フェラインが議決権をもたなければならないのだ。

ちなみにこのルールには例外条項もある。通称「レバークーゼン法」。企業が20年以上同じフェラインを振興し、かつ将来的にも振興すると見込まれる場合は、企業側が100%の投票権を保有できるのだ。

この「50+1ルール」は他の欧州5大リーグ、つまりイングランド、スペイン、イタリア、フランスのリーグには存在しない、フェライン文化に支えられたドイツに独自のルールなのである。

「投資の魅力が半減し、国際的競争力の低下につながる」などの理由から、過去にはこの「50+1ルール」の撤廃が提案されたこともある。しかし、仮にこのルールが破棄されれば、フェラインの会員が投票権を失い、ファンが離れる危険がある。

ドイツ国内のアンケート調査を見ると、例えば地元意識の強いFCケルンのファンの88.5%だけではなく、企業色が強いフェラインとして知られるバイヤー・レバークーゼンのファンもその87.1%が「50+1ルール」を支持していた。

「『企業名を入れてもクラブを誇りに思う』といわれる日本とは大きな違いがあるといわざるをえません。地域の人々が守りたいものがあるドイツと、守りたいものを築けていない日本との違いであるといえるかもしれません」

こうした地域住民の思いが、2部に降格しても多くの観客が集まるようなブンデスリーガの状況を生み出してもいる。

(次のページ:ハンブルガーSVの「S」は「サッカー」という意味ではない!?)
《大日方航》

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