なぜ『ブンデスリーガ』に観客が集まるのか…特殊なリーグ構造と歴史を紐解く 3ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

なぜ『ブンデスリーガ』に観客が集まるのか…特殊なリーグ構造と歴史を紐解く

オピニオン ボイス
ブンデスリーガ・参考画像
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80年代、テニスブームの裏側でブンデスリーガの人気は凋落。逆に選手の人件費は高騰し、多くのフェラインが経営危機に陥った。

83年に象徴的な事件が起こっている。財政難に陥ったアイントラハト・ブラウンシュヴァイクに、イェガーマイスター社が「イェガーマイスター・ブラウンシュヴァイク」という企業名入りの名前を提案したのだ。これに驚いたDFBは、緊急動議によって宣伝目的でのフェライン名の変更を禁止する。イェガーマイスター社は訴訟を起こすものの、DFBの主張が認められ、フェライン名の宣伝目的での変更が正式に規約で禁止された。

90年代に入ると、欧州全体の商業化の流れのなかで、ブンデスリーガにもVIP席、スタジアムの命名権販売などが登場する。この流れを加速させたのは、「契約が終了した選手の自由移籍」を認めるボスマン判決だった。

この判決以降、選手の人件費はますます高騰し、欧州のサッカークラブにはさらに多額の資金が求められることになる。そうしたなかで、ブンデスリーガの財務状況を好転させたのは、ペイ・パー・ビュー方式によるテレビ中継の実現であった。地上波生中継のないドイツにおいて、デジタル衛星中継の開始はスポンサー料の高騰にもつながった。この資金によってブンデスリーガは海外から代表クラスの選手を買い戻すことに成功したのだ。

その一方で、デジタル衛星放送の開始で跳ね上がった放映権料は、放映権料の「リーグ一括管理方式(現在のJリーグと同じ)」に対する各フェラインの不満を増大させ、これも訴訟問題にまで発展している。連邦裁判所は放映権の「リーグ一括管理方式」をカルテルとみなし違法判決を下したが、DFBは連邦参議院と共に例外条項を作成し、法改正によって放映権のリーグ管理を守ったのである。

このように商業化の流れはブンデスリーガにも多くの変化をもたらしたが、最大の改革は1998年の規約改正であった。ブンデスリーガには非営利法人としてのフェラインにしか加盟が認められていなかったが、この規約改正によって、フェラインから「プロサッカー部門だけを切り離して企業化」することが許可されたのだ。だが、あくまでも「切り離し企業化」であって、全ての企業に加盟が許されたわけではない。

現在の一部リーグには株式合資会社が5つ、株式会社が4つ、有限会社が5つ、フェラインが4つ所属している。(まだフェラインが4つ存在しているところが驚きだ)

プロサッカー部門だけを切り離すことが許可された理由として、経営の専門家を雇うことによる経営改善効果が期待されたことは勿論だが、ドイツの民法に、利益追求が自己目的化した場合、フェラインとしての権利が剥奪されるという規定が存在していることも理由のひとつにあげられる。つまり、DFBは、各フェラインから非営利法人の資格と優遇税制の権利がはく奪されることを恐れたのである。

「とはいえ、フェラインが資格を剥奪された例は歴史的にひとつもありません。ドイツにおいていかに強い自律性がフェラインに保証されてきたかがわかります」

(次のページ:他リーグに存在しない、ブンデスリーガの特殊ルールとは)
《大日方航》

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