プロ野球ドラフト会議と、放映権料ビジネスが矛盾する理由…ゼロから学ぶスポーツビジネス | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

プロ野球ドラフト会議と、放映権料ビジネスが矛盾する理由…ゼロから学ぶスポーツビジネス

スポーツ まとめ
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明治大学の釜崎太准教授が新入生向けに開講している、スポーツビジネスを学ぶ授業に参加した。授業は「球団ビジネスゲーム」と名付けられたゲームをフックにして進められた。スポーツビジネスについてゼロから勉強するにはいい機会となった。

学生たちは、授業でプロ野球のセ・パ両リーグ12球団に分けられ、課題をこなし収入を得て、ゲーム後の資産総額を競う。割り振られたアイテム、資産は各球団によってすでに差がついていて、実際の資産総額に比例している。身をもって球団毎の資産額の違いを体感してもらうねらいがある。

●プロ野球の放映権は、各球団が直接管理する

はじめのトピックは、プロ野球(NPB)の放映権収入についてだ。放送許可権について記された野球協約44条は「自由に許可する権利」について規定しており、地域の放映権料に関しては球団が直接管理できることになっている。

ここに、チームによって収益差が生まれた理由のひとつがあった。現在こそ数千万円規模に落ち着いているが、巨人戦の放映権は2005年までおおよそ1試合1億円の収益を生み出していたという話もある。

当時の放映権料は大きな差があった。それゆえ、パ・リーグは放映権料を獲得できるセ・リーグと交流戦を希望し、一方のセ・リーグはパ・リーグとの交流戦はやりたがらなかった。巨人戦が減るからだ。

しかし現在、巨人戦の視聴率の低下と放映権料の著しい下落により、この収益モデルは崩れかけている。理由として釜崎氏は、「Jリーグの開幕、娯楽の多様化、多チャンネル化、松井秀喜のメジャー放出」などを挙げた。

1995年~2010年までの15年間を振り返ると、プロ野球の収益は横ばいのままだが、メジャーリーグは収入をプロ野球と同程度の1400億円程度から約5000~5500億円へと拡大している。現在は1兆円超規模の市場にまで成長しているという。この変化を見て改革をはじめたのがパ・リーグだ。さまざまなビジネスモデルに挑戦し続けている。

「皆さんは実感があまりないかもしれませんが、昔に比べてグラウンドひとつとっても本当に綺麗になりました。パ・リーグは色々なビジネスモデルを展開しています」

●収入源の転換…"放映権"から”入場料収入”へ

サッカーも1990年代に大きな転換があった。そのひとつはイタリアのプロサッカーリーグ、セリアAの崩壊だ。

当時、セリアAは優秀な選手を世界中から買い集めていた。その契約金のほとんどは、放映権収入から賄われていた。しかし、ブンデスリーガ、プレミアリーグが選手を買い戻し始めると、一気に放映権料が下落。バブルが弾けたセリアAは現在、名門クラブすら借金が残るような状態になっている。

「90年代まで、スポーツビジネスの収入源は“放映権”でしたが、それがプロスポーツ組織の安定化を図る基準としての、“入場料収入”へと変わっていったのがスポーツ界全体の流れです」

プロ野球の場合、放映権は各球団が所持しているが、Jリーグ規約主管権譲渡規定第6条によると、「公衆送信権は、すべてJリーグに帰属する」と記されている。つまりJリーグの各チームは放映権を勝手に売買することができず、Jリーグが一括管理し、売り買いをするということだ。そこで得たお金が、各チームに平等に分配される。

この仕組みが、地域密着経営を実現させている。

「鹿島アントラーズはものすごく貧乏なチームだったけれど、いまやJリーグの中心チームになっている。新潟アルビレックスが黒字経営できる。いまのプロ野球のシステムではこの地方球団の黒字化というのはなかなか難しい」

プロ野球は放映権に大きな差があるが、この不平等を是正するためにドラフト制度がある。裏を返せば、不平等がなければドラフト制度は必要ない。Jリーグの場合は、どの選手がどこに行こうとも構わない、自由競争となる。契約が満了したあとも移籍は自由だ。

しかし、プロ野球の場合には、ここに保留条項が存在する。契約を満了しても、勝手に他の球団と契約することが許されない。この問題については、憲法違反ではないかと議論が巻き起こっている。

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《大日方航》

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