例えば、名実ともに全国レベルである名峰筑波山、クサリ場が続く健脚コースが有名な奥久慈男体山…そして、今回登った生瀬富士もそのひとつだ。
生瀬富士は、茨城県北西部の大子町にそびえたつ標高406mの低山である。大子町といえば奥久慈地方の中心地であり、日本三名瀑の「袋田の滝」で有名な観光地だ。この袋田の滝を囲んでいる山が、今回登った生瀬富士・立神山・月居山だ。
生瀬富士から尾根続きに立神山へ、そして、一旦下山してから月居山へ。最後に袋田の滝を見るコースを歩いた。
■低くても、高度感満点の生瀬富士
駐車場は滝本第1・第2駐車場が無料で生瀬富士の登山口にも近いので、登山の際はこちらを利用するのがいい。駐車場から30分ほど歩くと、木が伐採された鞍部に出る。ここから見下ろす景色が格別。近隣の奥久慈の山々に加えて、遠く日光男体山や那須岳まで見渡せる。さらに、目の前にはこれから目指す生瀬富士と立神山の頂が間近に見え、この眺めがとてもいい。
鞍部から歩くことさらに30分で、生瀬富士の頂上にたどり着くのだが…。その道のりに、難所が2カ所あった。
特にふたつ目の岩場の角度は、目の前に立つともはや「壁」である。クサリとロープが1本ずつ垂れ下がっていて、一見親切そうに見えるが、壁を登るなんて常人技ではない。
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生瀬富士のクサリ場。けっこう急だ
ましてや普段は鎖とは無縁の低山ばかり歩いていて、ボルダリング経験なし、運動神経なし、加えて臆病者の私にとって、それはまさしく「壁」となって目の前に立ちはだかった。その絶望感たるや、今来た道を引き返そうかと思ったほどである。
何とか難所を乗り切ると、すぐに頂上に着く。頂上には、茨城県の低山でもトップレベルと思われる、爽快な展望が待っていた。
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頂上からの景色
頂上からの眺めを見ていたら、以前に山のお師匠様が「奥久慈の山は標高以上の高度感がある」と話していたのを思い出す。師匠は「小さな北アルプスみたいだ」と奥久慈の山を表現していた。
小さな山でも、大冒険の感覚が味わえる。師匠が言いたかったことが、生瀬富士に登ってわかった気がした。その冒険度の高さは、下山後数日経った今も癒えていない足の筋肉痛が物語っている。