【THE ATHLETE】錦織圭の革新的クレーコート論…マイケル・チャンが取り戻させた自信 2ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE ATHLETE】錦織圭の革新的クレーコート論…マイケル・チャンが取り戻させた自信

オピニオン コラム
錦織圭 参考画像(2016年5月13日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年5月13日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年5月10日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年5月13日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年5月10日)
  • 錦織圭 参考画像(2016年5月22日)
  • 錦織圭(右)とマイケル・チャン(2016年1月17日)
  • 錦織圭(右)を見守るマイケル・チャン(2016年1月15日)
  • マイケル・チャン 参考画像(2016年1月26日)
■マイケル・チャンが再生したクレーコーターとしての錦織

チャン・コーチの影響について錦織は、「マイケルとやり始めてから、だいぶ変わってきたのを感じる」と全仏オープン前に語った。

チャン・コーチが錦織に施したのは、プレースタイルに対する思い込みを捨てさせることだった。ハードコートとクレーコートの戦いは別物であり、クレーでの戦い方を極めなければスペシャリストたちには勝てないという凝り固まった考えだ。

クレーでの定石とはベースラインよりも後ろで構え、コートを広くカバーしながらスピンの効いたボールを打ち返すというもの。この最たる例が“ザ・キング・オブ・クレー”ラファエル・ナダルだ。

ベースラインよりも数メートル後ろで構え、フットワークと持久力で広い範囲のボールを打ち返し、鍛え上げられた左腕から世界でも類を見ない強烈なトップスピンを繰り出す。誰にも真似できない攻撃的ディフェンスでナダルは、全仏オープン史上最多の9度優勝を果たした。


ラファエル・ナダル

チャン・コーチと出会う前の錦織も、スペシャリストのように振る舞わなければ彼らに勝てないと思い込んでいた。だが、体格やフィジカルで勝る欧米の選手が自分たち向けに編み出した最適解をそのまま輸入しても、アジアの選手が結果を出すのは難しい。

チャン・コーチが錦織に求めたのは待って攻める定石とは真逆、クレーコートでもハードコートと同じように前へ出て攻めることだった。

■錦織とチャンが実践する革新的クレーコート論

長いラリーが特徴のクレーコートにあって、錦織の試合は1ポイントあたりのラリー数が短い。錦織はクレーでもハードコートと同じように隙あらばコートの中へ入っていき、速い展開のテニスを仕掛ける。そうして相手の考える時間を奪い、テンポ良く攻め込んで自分のリズムに巻き込む。

もちろん実際にやるとなれば、言うは易く行うは難しである。ハードコートに比べイレギュラーバウンドしやすく、足下も滑りやすいクレーコート。前に出ながらボールの跳ね上がり際を安定して打ち返すには、高いショットの精度と集中力が必要だ。



クレーコートの試合は多彩なショットの組み合わせで相手を崩し合う展開が楽しめることから、ボードゲームのチェスにも喩えられる。元来それは錦織が得意とするところだ。相手がベースラインに張り付いて前へ出て来ないなら、彼の持ち味であるドロップショットなどを生かした創造性が発揮される。

チャン・コーチの授けた戦術でスペシャリストの呪縛から解放された錦織は、クレーコートの上でも縦と横の動きをミックスした立体的なテニスで成績を伸ばした。

今の錦織についてチャン・コーチは、「彼はより完成度の高い攻撃的な選手になった。ムラがなく自信に満ちている。彼の中でたくさんのことが変わった」と大きな変化を認めた。

結果が伴ったチャレンジは精神にも良い影響を与える。安定した戦いが続いた今季クレーコートシーズンを振り返り錦織は、「クレーでの戦い方が断然と良くなっている。これだけ結果が出ていると、(クレーコートを)好きにならずにはいられない」と全仏オープン前に手応えを語った。

ジュニア時代には良い思い出がたくさんあり、大好きだったはずのクレー。勝てないことで一旦は苦手意識を植え付けられたが、再び錦織の心は赤土の上に戻ってきた。



■次のチャレンジは打倒BIG4

錦織は5月23日にシモーネ・ボレッリと全仏オープン1回戦を戦い、6-1、7-5、6-3でストレート勝ちした。雨の影響で試合途中に順延が決まり、2日間にまたがって行われる難しい試合だった。それでも錦織は2014年、2015年のウインブルドンでフルセット戦ったボレッリを2時間で下している。

この試合のあと錦織は、「クレーコートの上でも本当に自信を感じています。最近3年間は特に。バルセロナでは2度優勝することができました。今年このタイトルを防衛することはできませんでしたが、クレーコートでもトップ10選手を打ち負かしてきました」と精神的な充実ぶりを語った。

「クレーが自分のベストサーフェスかと言うと、ハードコートのほうが好きです。だけど、クレーで最大の目標はナダル、ジョコビッチ、マレーに勝つことだと考えていますし、それは次のチャレンジです」

《岩藤健》

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