■ズラタン伝説に新たな1ページ
試合前から主役はイブラヒモビッチだった。前日にパリSGからの退団を宣言、ツイッターで「王様のように現れて、伝説のように去る」とコメントした男の本拠地最終戦を見ようと、多くの観客が詰めかけた。
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ズラタン・イブラヒモビッチ
My last game tomorrow at Parc des Princes. I came like a king, left like a legend pic.twitter.com/OpLL3wzKh0
— Zlatan Ibrahimovic (@Ibra_official) 2016年5月13日
ビアンチに並ぶゴールは前半18分。アンヘル・ディ・マリアが右サイドから上げたボールを、倒れ込むようにして身体に当て押し込む。綺麗なゴールではないかもしれないが、どんな形でも得点するんだという気迫のこもった今季37得点目。
その後イブラヒモビッチは2得点に絡む活躍を見せるが、新記録となるゴールはないまま時計の針が進む。記録更新は不可能かと思われたが後半44分、ハビエル・パストーレのクロスに頭で合わせてゴールネットを揺らした。今季38得点目はイブラヒモビッチらしい、打点の高いヘディングシュートだった。
記録にも記憶にも残るゴールを決めたイブラヒモビッチだが、彼の王様のような振る舞いはこれで終わらなかった。ふたりの息子をピッチに呼び寄せ、そのまま一緒に退場したのだ。すでにパリSGは交代枠を使い切っており、代わりの選手を入れられない状況だったにも関わらずである。
まさに不遜。イブラヒモビッチでなければ許されない。
■一大プロジェクトの中心人物として過ごした4年間
パリSGでの本拠地最終戦を終えたイブラヒモビッチは、このスタジアムで戦う最後のホームゲームを感慨深げに振り返っている。
「今日はとても気持ちが高まった。ここでは最高の4年間を過ごした。今日は考え得るなかで最高の締めくくり方だった。本当に満足している。気持ちを言葉で言い表せないよ。素晴らしい一日だったし、僕の中に永遠に残るだろう」
2011年5月にパリSGはカタール資本によって株式の大半が買い占められた。翌年には残る株式も購入し、現在ではカタール王族ともつながりを持つナーセル・アル=ヘライフィー氏が会長を務めている。彼らの目標は明確だ。欧州最高峰の大会UEFAチャンピオンズリーグ(CL)で優勝すること。この目標のためにアル=ヘライフィー会長らは巨額を投じ、常に移籍市場を賑わせている。
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このチームにイブラヒモビッチは2012年の夏にやって来た。一大プロジェクトの目玉として迎え入れられた彼は、初年度から30得点でリーグ・アン得点王を獲得、チームも19シーズンぶりにリーグ制覇を成し遂げている。
長くリーグ・アン優勝から離れていたチームは、イブラヒモビッチを加えた年から今季まで4連覇を達成した。その間にCLでも4年連続ベスト8まで進んでいる。
自身の在籍時に大躍進したチームを、「僕が来てからパリSGは大きく変わった。僕らが来てからすべてがスタートしたが、すべてがとても早く成長した。素晴らしい4年間を過ごしたよ」と穏やかな顔で語った。
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